2018年12月31日 16:47

やさしい天皇の30年

 思ったのですが、もしかして改元が計画的に行われるのは、日本史上初めてってことはないですかね。

 元号を変える改元は、古くは時の権力者の考えで行われ、明治以降は天皇の代替わりごとに行われてきました。基本的に突然変わってきたわけです(昭和→平成の時もそうでした)。今回のように、いつ今の天皇が辞めて次の天皇が即位するということが事前に計画され、それに伴い元号も計画的に変更されることになるというのは、もしかしたら史上初?あるいはそうでなくとも、非常にまれなケースなのではないかと思います。

 元号が天皇1代につき1つと決められている制度を、一世一元の制といいますが、それをWikipediaで調べていたら、面白い写真が載っていました。

 明治・大正・昭和、そして今上天皇のポートレートです。先の三代が軍服姿なのに対し、今上天皇だけが燕尾服姿です。

 明治・大正・昭和と、天皇は国家元首であるとともに、軍の大元帥でもありました。軍服姿には、大日本を率いる強いリーダーという意味合いがあるのでしょう。一方で、今上の燕尾服姿には、「平和国家」日本の象徴としての意味合いがあるのだと思います。

 今上天皇(および皇后)についてその特質をあげるならば、やさしさということがまず第一に来るのではないでしょうか。

 大地震や気象災害で被災した国民のもとに駆け付け、膝をついて目線を合わせて慰めの言葉をかけたり、日本各地を巡行し、その土地土地の人々に声をかけたり、また、先の大戦で多くの犠牲者が出た内外の場所を訪れる慰霊の旅を続けてきたりしてきた姿が思い出されます。さらに、誕生日などのインタビューでは、社会的な弱者や戦争や災害で傷ついた人々への天皇自身の同情と、それを国民に意識するよう呼びかける言葉をしばしば述べてきたことも記憶に残っています。

 平成の30年間で日本に起こった最も大きな変化は、国民もやさしくなっていったということだと私は思います。そして子どもたちの心の発育環境は、よい方に向かってきたと思います。

 子どもの虐待に対する世間の見方は昔に比べると非常に厳しくなり、子どもの気持ちや意思が尊重される世の中になってきました。私の子どものころは、学校ではまだまだ暴力的な教師が元気にしていましたし、子どもに対する暴力・暴言なんかは、しつけの一環として特に問題にもされていませんでしたよね。

 今でも、「うちの子にはもっとビシビシ厳しくやってください」なんてことを言われる親御さんもいらっしゃいます。私も、「はい、承知しました」とお答えはするのですが、本気にはしていないです。だって、私のような昭和のおっさんが本気でしごいたら、とても持たないですよ(笑)親御さんたちもやさしい方ばかりですからね。で、私も、それはよいことなのだと思っています。

 こうしたことが、天皇一人の活動だけで実現するわけではなく、もっと大きな、社会の歴史的な流れの中でこのようになってきているのだとは思いますが、そうだとしてもやはり、今上天皇はそのような日本人のまさにシンボルでありました。その点で、まったく新しいタイプの偉大な天皇であったと思います。

 この平成の30年間に培われた日本国民のやさしさを、これからも子どもたちが享受していけることを希望します。どんな個性を持った子どもたちも、居心地悪い思いをすることなく学び、自分の持ち味を生かして活躍できる世の中にもっともっとなっていけばいいと思います。

 皆様も、よいお年をお迎えください。

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