2016年10月23日 23:11

「千葉千葉」と2回唱えるとバッハが出てくる

 ここ数年、日本のオーケストラは驚異的にうまくなったように思います。

 今から25年ほど前、私が学生だった頃、かなり頻繁に都内のオーケストラの演奏会に出かけました。

 NHK交響楽団だと、演奏会当日の開演時間のちょっと前になると、学生券1枚1,000円というのが売り出されていました。今は1,500円くらいするのでしょうか。大学の授業の後、原宿からNHKホールに行き、N響の定期演奏会を聞き、それから家に帰るということがしばしばありました。

 それはそれで楽しんでいたのですが、当時は日本のオーケストラは、世界的にはまあ二流どころなのかなと思っていました。

 実際、当時の感覚だと、海外オーケストラというのはもう、それはそれは大変素晴らしくありがたいものだったのです。ま、実際日本のオーケストラに比べて明らかに技術も上でしたしね。

 昔の日本国内のオーケストラの団員さんたちは、自分たちの楽団を指揮しに来てくれる外国人の有名指揮者を、「サヴァリッシュ先生」などという風に呼んでいました。もう、とにかく欧米の音楽家は仰ぎ見る存在、そんな感じでした。いや、現実に、技術的にも音楽的にも、あちらが圧倒的に上でしたからね。

 それが、最近NHK Eテレの「クラシック音楽館」なんかを見ていると、現代のNHK交響楽団の演奏は、もはや世界レベルだなと思います。実際、彼らも「世界のトップレベルのオーケストラになれるか、ここ数年が勝負」と考えているようです。

 近い将来、世界の一流オーケストラに、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、NHK交響楽団と並び称される日が来るかもしれません。頑張ってほしいものです。

 N響に限らず、ほかのプロオーケストラの技量も素晴らしく上達しています。学生のアマチュアオーケストラも、かなりのレベルなんじゃないでしょうか。

 この、日本のオーケストラの驚異的なレベルアップの背景には、楽器が非常に上手な人がそこらへんにたくさんいるということがあるように思います。

 数か月前に、若手のソロ演奏家がオーケストラと共演するコンサートに招待されて行ってきたのですが、本当にとても上手でした。将来の夢は何かと聞かれたその若手演奏家が、オーケストラに入ることだと答えていて、ちょっと驚きました。

 ソロの演奏家というと、めちゃめちゃ楽器がうまいので、オーケストラの一員なんかには収まらず、むしろオーケストラを従えてその前で演奏するスターのような存在だろうと思っていたのですが、そういうのは少し古い発想なのかもしれません。

 たしかにそういうスタープレイヤーはいますが、そんな人はほんの一握り。実際には、楽器が達者な人は世の中にたくさんいて、その中に埋没しかねない状況でくすぶっている音楽家は少なくないのかもしれません。そのような状況にあるよりは、音楽家として安定した地位のあるオーケストラの正メンバーに、と夢見る若手演奏家がたくさんいるのではないでしょうか。

 オーケストラに入ることが大変な関門になっている→そこから日本のオーケストラの驚異的なレベルアップということが起きているのではないか、そのように推測していますがどうでしょうか。

 というわけで(?)、今日は家族で千葉交響楽団の第100回定期演奏会に行ってきました。

 「千葉交響楽団」というのがあるのかと思われる方もいらっしゃるでしょう。こちら、今年9月までニューフィルハーモニーオーケストラ千葉という名称でした。

 学校の芸術鑑賞会などで、彼らの演奏を聞いたことがあるという方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。私も、高校生の時に、学校にニューフィルが来てくれたことを覚えています。

 そのニューフィルが、まさに今月から千葉交響楽団と名称を変えて、その最初の定期公演が今日、亥鼻の千葉県文化会館で行われたのでした。

 今日の演目の一つに、山本純ノ介作曲の「千の音と楽の葉」の世界初演がありました。

 山本純之介氏は、作曲家・指揮者で有名な山本直純氏のお子さんですが、千葉大教育学部の教授を務めているというのを今日初めて知りました。

 山本直純というと、映画「男はつらいよ」、NHK大河ドラマ「武田信玄」、TBSラジオの「小沢昭一の小沢昭一的こころ」などの音楽が思い出されますが、テレビ番組で「オーケストラがやってきた」というのがあって、私にはそれも懐かしいですね。

 その番組の中で、ある時、ベートーヴェンの交響曲第5番(運命)が紹介されいました。その第1楽章で、オーケストラ全体の強い音の後に、切ないオーボエのソロが入るところがあるのですが、それを聞いたときに、宇宙の中に人間がただ一人浮かんでいるようなイメージがぱっとひらめいたことを思い出します。まだ小学生くらいの歳だったと思いますが、人生にはこういう孤独というものがあるのだということを、なんとなく感得した初めての経験でした。

 ともあれ、山本純之介氏の作品。自身による楽曲解説によると、ある時、千葉の音楽を考えていて、「CHIBA CHIBA」と文字列の中にバッハ(BACH)が隠れていることに気が付いたということです。

 バッハは、自分の名前を音名に読み替えてメロディーを作っています。つまり、B(シ♭)・A(ラ)・C(ド)・H(シ)という感じにですね。これをヒントに、山本氏は、千葉にまつわる今回の楽曲を作曲したということだそうです。

 クラシック音楽全般にそうなんですが、1回聞いたくらいではよく分からないんですよね。今回の演奏は録音されて、CD化されるといいんですがね。機会があれば、何度も聞き直したいですね。

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