「国語力がつくと頭が良くなる」とはどういうことか
昨日は定期テスト対策学習会「日曜道場」でした。千葉県公立高校前期選抜学力検査直前ということもあり、定期テストの勉強のために集まった中学1・2年生だけでなく、3年生も何人も来てくれました。朝9:30に開校して、終了時刻まで7時間にわたり、ほとんど全員がぶっ通しで勉強を頑張りました。
「日曜道場」では、通常の授業と同様、個別に試験範囲を教えてもらうこともできますし、自習を希望する生徒はそのようにすることもできます。もちろん自習中にちょっとでも分からないことがあれば、私や講師の先生たちに教えてもらえます。
昨日は、自習に来た中3受験生もたくさん質問をしてくれましたが、その質問に彼らの成長ぶりを強く感じました。
どのような質問だったかというと、
「消費税は低所得者ほど負担が大きくなる」とはどういうことか
「領事裁判権」とはどういうことか
「衆議院が内閣不信任案を可決したとき、内閣は衆議院を解散するか10日以内に総辞職する」とあるが、衆議院を解散するのは不信任決議が出されたときだけなのか
といったものでした。とてもいい質問だと思います。
もしかすると、これらの質問のどこが良い質問なのか分からない方もいらっしゃるかもしれません。
彼らの質問の良いところは、一般にただ「暗記しろ」と言われているような事柄や用語について、一体これはどういうことなんだろうと疑問を持てるようになっていることを示しているところです。「教科書の太字のところを暗記する」ことが勉強だなどと思っているような人とは比べ物にならないくらい、知的な人間に成長しているしるしです。
これらの質問をしてくれた生徒の中には、中3になって他の個別指導チェーンから国語道場に移ってきた当初、日本語語彙力が小学生の低学年レベルだったという者も実はいるんです。そのお子さんは道場に入ってから毎日のように通い、半年弱で小学レベルの国語をクリア。現在は普通に高校受験用の教材で学習するまでになった努力家です。志望校については、入塾当初はちょっと厳しいかなと私自身でさえ思っていたほどだったのですが、入試問題学習会「過去問道場」の最終回でついに合格ラインを超えるところまで学力も伸ばしてきました。
半年前でもこれほどの良い質問ができるほどの日本語力ではなかったので、本当に一人ひとりの国語力に合った指導をすることでここまで成長するものかと目を見張ります。
消費税についての質問には次のように答えました。消費税は、累進課税の所得税などと違い、どのような所得階層の人に対しても定率で課されます。そうするとなぜ低所得者ほど負担が大きくなる(逆進性がある)ことになるのか。それを理解してもらうために、まず10,000円の買い物をしたときの消費税額を答えてもらいました。800円ですね。800円というと、例えばZOZOの前澤社長のような人からすると、お金のうちに入らないような金額かもしれません。しかし、中学生の君ならどうですか?800円と言ったら、一日塾で勉強するときのお昼ご飯1食分(あるいはもっと大きい金額)で、決して小さい金額ではありませんね。
社会の「暗記事項」をただ言葉だけ棒暗記しているか、自分に実感できる事柄として理解できているかどうかでは、学習の質に雲泥の差があります。国語力が伸びることで、単なる棒暗記のような学習から、実感を伴った理解につながる学習ができるようになったと言えるでしょう。
次に、「領事裁判権」についての質問への回答です。
「領事裁判権」?そんなの常識だよと思っているあなた。あなたの「領事裁判権」の理解はこのようなものではありませんか?
《外国人が犯罪を犯しても日本の法律で裁くことができないこと》
では、「外国人が日本で犯罪を犯しても日本の法律で裁けないこと」をなんで「領事裁判権」と呼ぶのですか?そういうところに疑問を持てたところが、この質問に来た生徒の素晴らしいところです。さすがは国語道場生。言葉に対する繊細さが違います。
「領事裁判権」とは、外国で犯罪の容疑をかけられた者が自分の国の領事による裁判を受けられることです。「領事」とは、外国の役人で、駐在する国にいる自分の国の人の保護などをするために派遣されている人です。社会科の教科書では、この領事についての説明は殆どありません。だから、本来なら、「外国人が犯罪を犯しても日本の法律で裁くことができない」ことをなんで「領事裁判権」というのかについて疑問を持つ子どもはもっとたくさんいてもいいと思うのですが、現実にはあまりいません。子どもたちの多くが、「重要語句を暗記する」ことが勉強だと思いこんでいて、言葉に対する繊細さを持ち合わせていないのです。このような知識詰め込み型の「お勉強」しか知らない人たちは、将来AIとの職業争奪戦に勝つことができるのでしょうか?
内閣総理大臣による衆議院の解散についての質問もいいですね。
日本国憲法第69条に、「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。」とあります。また、第7条3項に「(天皇は内閣の助言と承認をもとに)衆議院を解散すること。」とある。これ以外に憲法には衆議院の解散についての記述はありません。
ここに書かれていることを素直に読めば、衆議院の解散は、衆議院が内閣の不信任決議案を可決したときだけ、内閣によって10日以内に決定されるものということになるでしょう。実際、あらゆる教科書や参考書にも同じようにまとめてあるはずです。
しかし、現実には、2017年の「『国難』突破解散」などのように、衆議院から不信任を突きつけられたわけでもないのに、内閣が衆議院を解散することは度々行われています。この質問をしてくれた生徒は、教科書や参考書の記述と現実が異なっているので、そこでよく分からなくなって質問してくれているわけですが、そこが本当に素晴らしいところです。学校や塾で学んだことと日々の生活の中で起こることと結び付けられないお子さんは実際非常に多いのですが、この質問をしてくれた道場生は、自分が学んだことを現実で起きていることと比較して考える力を持っているということです。
国語道場の生徒たちがこのような良い質問ができるようになったのはなぜか。最も大きな原因は、国語力が伸びたことによって頭が良くなったことです。
国語力が伸びるとなぜ頭が良くなるのか。それは言葉によるものごとを認識する能力が高まるからです。「ここで言われていることはどういうことだろう」、「なぜこのようになっているのだろう」と、あらゆるものごとについて普通の人よりも気づくことが多くなり、疑問や好奇心を持てるようになったわけです。
このような人は当然成績も良くなりますが、これは結果に過ぎません。ものごとへの理解が深まるので、同じように勉強しても知識として定着しやすくなるということです。中学で小学校低学年程度の日本語力しかなかったお子さんでも、現状の国語力に合った教材を選んで適切に指導してあげることで、上のように柔軟な頭脳を手に入れ、良い観点を持てるようになります。そうなれば成績なんかは後から伸びるようになるのです。
大切なことは、国語力を伸ばし言葉による認識能力を高めることで、子どもたちの頭を良くしてあげることです。成績なんてものはあとから付いてきます。逆にそういう事もわからずに、ただ数学が苦手だから数学をチェーンの個別指導塾で教えてもらうとか、当てずっぽうで目先のことしか考えていないようなことをやっても、何も成果が上がるはずがありません。このことを大人は肝に銘じなければなりません。
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