2016年09月08日 12:03

女性が、男性よりも稼げないようにわざわざ進路指導しているのではないか

 先日、ある女子高校の塾対象学校説明会に行ってきました。

 その女子高校は、保育士や幼稚園教諭を目指す生徒のために、実習や資格・検定試験の奨励を行い、系列の専門学校は、そこの生徒の優先的な入学を認めているそうです。説明会では、実際の高校生が来てくれて、教わったことを披露してくれました。

 「皆さんもご一緒に」ということで、いい歳の塾のおじさんたちが、先生役の女子高生に習って手遊びをしたり、「大きなかぶ」のお話を聞いたりしました。塾のおじさんたちは、仕事柄、子どもたちが頑張ってやっていることには温かい態度をとるものなのです。

 説明会の後は、授業見学で流れ解散でした。せっかくなので、できるだけたくさんの教室を回ってきました。

 1つだけ理科の授業をやっている教室があったので、そこに入ってみると、生徒が3人しかいませんでした。きめ細やかにやってくれているというよりも、理科の希望者がほとんどいないということなのでしょうね。

 説明会から国語道場に戻ってきて、女子教育のあり方について考えてしまいました。なかなか難しいなあと。

 「難しい」ということの一つは、保育士という仕事について。

 春に、高校時代の友人たちと会う機会があったのですが、その中で保育士になった友人の一人が、最近それを辞めてしまったという話を聞きました。細かく理由は聞かなかったのですが、なんでも世は深刻な保育士不足なのだそうです。理由は、どんどん辞めてしまうからだそうです。

 人材不足となると、ふつうは給料や待遇がよくなっていくように思うのですが、保育士はそうではないのだそうです。仕事は年々きつくなり、給料は、すべての職種平均と比べて10万円以上低いということです。で、職員がどんどん離職してしまうと。

https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3384/1.html (NHKクローズアップ現代)

 給料や待遇が悪いために離職が多いのに、それらが一向に改善されず、さらに人材難が深刻化するという点で、介護の仕事と似たような問題を抱えているように思います。

 こういう話は、報道や人から何となく聞いたこともあるとか、見ていて感じたことがある方は、少なくないのではないでしょうか。にもかかわらず、なぜ女子には、保育や介護の仕事が勧められるのでしょうか?

 私個人としては、保育や介護の仕事は大変重要であると考えています。ですから、本道としては、それらの仕事の給料や待遇が改善され、多くの人がこの仕事に就きたいと思うような世の中になってほしいと思ってはいるわけです。

 とはいえ、それらの仕事が、今現在現実に長く務めていかれないものになっていて、しかもそれが改善する兆しが一向に見えない状況であることは、子どもたちの進路にかかわる立場にある者なら、頭に入れておくべきではないでしょうか。

 さて、で、どうして女子にはそういう、薄給で長く務められない進路が勧められてしまうのでしょうか。やはりそこには、「女はそんな稼げるような仕事をしなくてもいいんだ」という観念を多くの人が持っているからなのではないか。そういうおかしな観念についてあまりにも鈍感な大人が多く、これからの時代を生きていく女の子たちに、「女の子だったらこれでいいよね」なんて安易な進路指導をしているからなのではないかという気がしてなりません。

 そこで、「難しいな」と感じたことの二つ目なんですが、女子が理数教科を敬遠してしまうことです。先日学校見学に行った女子高校では、理科の選択科目の生徒が3人しかいませんでしたが、ほかの多くの高校でも、「理系クラス」の女子生徒は今でも極めて少数です。

 ビジネス雑誌をよくお読みになる方はご存じかと思いますが、理数教科の教育のナウい言い方は、STEM教育なんだそうです。Science、Technology、Engineering、Mathematicsのそれぞれの頭文字をとったものですね。

 何でビジネス雑誌には「STEM教育」なんて言葉がよく出てくるのか。理由は簡単、それらを専攻した人たちの給料がいいからです。

 日本の高校の「理系クラス」の現状。これって、「稼げる仕事は男のもの、女は稼げる仕事に就かなくていい」と多くの人が思っている表れですよね。

 世界的に見て、女子が理数教育を受けない傾向はあるにはあるのですが、日本の現状はやはり極端であるようで、大学などで理数教科を専攻する女性の割合は、OECD加盟国の中で、ダントツのビリでした。

https://synodos.jp/education/15724/2 より転載

 

 私が塾という仕事に初めてついたのは、広島カープの前回の優勝よりも前のことですが、そのころ今と大きく変わったのは、なんといってもお母さんの所在と家電話です。いろいろなお知らせで保護者の方にお電話をするのですが、家の電話にかけても出られない方が本当に多くなりました。

 今からたったの20年程度前のことですが、塾生のお母さんというと特にお勤めはしていないという方が多数派だったと思います。急速に時代が変わっているのだなと実感します。

 これからの時代、男女の給料格差はどんどんなくなっていくでしょうし、当然そうあるべきだと思います。配偶者控除のような、女性が働かない「メリット」も次第になくなっていくことでしょう。

 私たちの子どもが独り立ちするころには、世の中はどうなっているのでしょうか。こんな時代の大きな移り変わりの時期に、今現在でもすでに時代遅れな「女の子だから・・・」という教育をしていていいものなのでしょうか。

 世界で初めての女性大学教授は、科学者でした。私は、長年ロシアのソフィア・コヴァレフスカヤだと思っていたのですが、もっと古く、イタリア人のラウラ・バッシという人がボローニャ大学の解剖学教授になっていたのですね。

 どうして理系だったのか。それは、科学的真理は性差なんて関係ないからでしょう。「女の子だから・・・」なんて観念は、理数教科こそがぶち壊してくれるものなのです。

 これからの時代、女の子こそ理数教科を頑張ってほしいと思います。

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