「好きなことをやりなさい」
いよいよ公立高校前期選抜への出願が始まった。
どこの塾でも、テスト業者さんから新聞発表前日に出願者数の情報がもたらされる。
国語道場では、それに加えてその日のうちに、悲しいくらいによく当たる各高校別学科別のボーダー予想をお配りする。ここがよそとは違うところ。
何が「悲しいくらい」なのかというと、すでに受けてもらっている模試の成績から、入試がそれと同程度の結果だと前期選抜がどうなるかということが事前にほぼ分かってしまうから。
もちろん、模試は終わったこと。本番はこれからのこと。別物である。
ボーダー予想が芳しくなかった受験生は、尻にあせもができるくらい勉強に打ち込めばよい。それだけのことである。
さて、1月31日の日曜日は、すでにお知らせしたとおり、国語道場では恒例の公立高校入試・第4回定期テスト・後期期末テスト対策日曜道場が行われていた。
一方、都内青山葬儀場では、昨年亡くなった水木しげるサンのお別れの会が開かれていた。
家内と小2の娘が参列してきたそうだ。漫画家志望で水木しげるサンを敬愛する娘のたっての願いで。
祭壇の様子。垂れ幕に大きな目玉が・・・。
参列者に配られた記念カード。
「好きなことをやりなさい」か・・・。難しいことだなあ。
水木しげるサンというと、いかにもマイペースに自分の好きなように生きてきたかのように思われる方もいるかもしれないが、彼の来歴を読んだり聞いたりしたことがあれば、とてもそうとは考えられないだろう。
画家を目指したが思うように進学できなかったそうだ。太平洋戦争の南方での過酷な体験。復員後職業を転々とし、漫画で食べていかられるようになったのは40過ぎてからだという。
結果的に好きだった絵と漫画がかろうじて結びついてはいるけれども、最初から漫画家でやっていこうと思ったわけではないだろう。そういう見方からすると、水木さんにしても「好きなことを」やってこられたわけではないのだと思う。
ただ、漫画家をやっていて、これはまあ自分は好きだなと思えたということだったのだろうか。
そもそも、自分が「好きなこと」って何なのかを知ること自体がたいそう難しい。
子どもであればゲームかもしれない。パチンコが大好きという大人もいよう。一番好きなことは寝ることという人も少なくないだろう。
でも、それらを自分の「好きなこと」と胸を張っていったり、それに生涯をかけるということはちょっと考えられない。
なぜか。そんなものにはそれほどの価値があるとは、まともな神経をした人なら感じられないからだろう。
やっぱり、胸を張って「これは自分の好きなことだ」というからには、何かそれ相応の価値がありそうなものということになるだろう。
そうすると、それなりに身に着けるには時間と努力が必要なものということになるんじゃないか。
そうはいっても、自分はミケランジェロを超える芸術家になるとか、ベートーヴェンになるとか言い出すのもあまり感心しない。
その可能性がゼロだと、他人が判断することでもないけれども、まずは自分が継続的に取り組めることから頑張っていくのが大事だと思う。
水木さんは、とりあえず絵が描けるというところから、紙芝居を作ったり貸本をやったりして継続的にかんばっていくうちに、漫画家として天皇陛下から香典を下されるまでになった。まことに偉大である。
自分はモーツァルトやレオナルドではないという自覚のある人間であるならば、生きていく道はこれである。まずは自分の目下できることをやってみる。そしてそれが、まあ「好きなこと」かなと思われるならば、継続することだ。
何週間か前、ツイッターのタイムラインで、水木プロダクションの昔の求人広告の画像が流れてきた。
「すぐやめる人はキライ」、「絵は下手でもよい」、「誰でも2、3年すればうまくなる」。
この辺にエッセンスがあるな。「誰でも2、3年すればうまくなる」なんて言うけれども、実際2、3年続けられるというのは大したものだし、それはやっただけなんでも上達するだろう。
これから受験生たちは高校生になっていくわけだけれども、こういうことを何となく頭の片隅にでも入れておいてほしいなと思う。
高校の勉強というのは結構大変。何が大変といってとにかく分量が多い。分量が多いうえに少々ややこしくて、マスターするにはそれなりに練習が要る。しかし、時間は今まで通り24時間。
それでいて高校生は何かと忙しい。そして、なんだかすぐに眠くなる年齢でもある。
そんなわけで7割がたの高校生は学業を途中で挫折してしまう(これがまた日本独特の風習で、学業は全然身についていなくても、おとなしく座っていれば卒業はできる)。
西千葉地区の子どもたちであれば、たいがいは大学は「千葉大」あたりに行けたらいいなと思っているだろう。それがとてつもなく大変なことだということを高校に行って身に染みて知るわけだが、そうそう簡単に投げ出さないでほしいね。
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