「私立単願」はそんなに悪いことなのか?
自分がこうしてブログを綴っているので、他の方が書いていらっしゃるものも拝見することがよくあります。
その中で受験期が近づくと増える言説に、以前から違和感を覚えるものがあります。それは、「私立単願」バッシングです。
「私立 単願 逃げ」とかいったキーワードでググってみられるといいです。日本全国様々な塾さんによる「私立単願」に対する中傷記事が引っ掛かります。
やれ、「私立単願」なんかを選ぶ人間は精神的に弱いだとか、そんなことでは大学受験や就職活動なんかには立ち向かえないだとか、最後まで受験勉強をやっていないから学力が低いだとか、まあ、ありとあらゆる悪口雑言を目にすることができます。こんな風に直接的な表現ではなくても、「第1志望とするべきは公立であって、私立なんて本来滑り止めでしょ。それなのにそこを単願なんて・・・」とでも言いたげな文章も結構ありますね。
今の私はこのような言説に対して強い違和感を覚えますし、教育者によるこのような物言いが許されるのかとさえ思います。現に、国語道場ではその「私立単願」で進学先を決めた子どもたちは、皆継続して頑張って勉学を続けています。まもなく中学の復習を終え、高校の予習に入るところです。
ところで、先ほど「今の私」と申しましたが、実は「以前の私」は、「私立単願」バッシングをするような人たちと似たような考え方を持っておりました。自分自身の学歴が幼・小・中・高と公立だったからだと思います。公立入試の最後まで受験勉強をがんばった者は学力は高くて、精神的にも強いのだなどといった、今考えれば恥ずかしい観念にとらわれていたものです。
私は一浪ののち、付属の幼・小・中・高校を持つ都内の私立大学に進学しました。入学するときには、こんな私立の「エスカレーター式」で上がってくるような連中なんて、精神的にひ弱な奴らばかりに決まっているなどと、根拠のない思い込みを持っておりました(/ω\)
入学して、実際にその「エスカレーター式」に上がってきた連中に出会い、彼ら/彼女らとも学問や部活動を通して友人ができてくると、いかに自分がくだらない思い込みにとらわれていたかということを思い知らされました。
彼ら/彼女らは概して性格がよく、友好的です。素直で屈折しておらず、前向きなのでむしろ精神的に強いとさえ思いました。こんな感じで好人物が多いせいか、就職もみなうまくいっていたように思います。私が大学を卒業する頃はバブル景気が崩壊し氷河期が始まったころではありましたが、そうしたことも物ともしていない様子でした。
よくよく考えてみれば、高校入試や大学入試の苦労を経験していない彼らが精神的に強いのは、むしろ道理です。子どもにムダなストレスを加え続けると、性格が屈折して自己肯定感が低くなるのは当たり前のことでしょう。さも高校や大学受験の労苦を経験することが人生における神聖なるイニシエーションであるかのごとくそれを祭り上げ、何が何でもそれを経験させようとすることこそ、体罰などの厳しい「しつけ」が子どもにとって必要だなどと固執する心理に似ているのではないでしょうか。
自分が塾をやっていてこういうことを言うのもなんですが、生徒が公立を目指してくれるのは塾経営的には大変都合がよろしいわけですね(^^;
公立高校の入試日程は、おそらくどこの地域でも全日程の最後ではないでしょうか。すなわち、生徒が公立を目指してくれると、塾に通う期間は自然と長くなります。また、公立高校入試には合格の確約が通常出ませんから、公立を受けるとなると受験生は必死です。そうなると、塾にもたくさん来てくれるようになるでしょう。そして、合格者が出れば「塾の実績」になりますね。「◯◯高校△△人」なんて、宣伝にもなりやすい。
もちろん、公立高校に行ってほしいという保護者の方は圧倒的に多いので、塾がお子様方に公立を強く進めること自体はそれほどおかしなことではありません。上に挙げたような事例をことさらに批判する必要もないでしょう。しかし、世の中の「私立単願」で進路を決める子どもたちに対する人格的攻撃は目に余るように思いますので、あえてこのようなことを述べさせていただきたいと思います。
自分に合った私学で、ムダなストレスなく伸び伸びと育ち、精神的な強さを身につけて生きていけるのであれば、それはそれでよい教育ではありませんか。公立校入試にこだわり過ぎる方こそ、入試をあたかも人生のゴールかなにかと勘違いしているところがあるのではないでしょうか。
進学先についていろいろと考え悩み、最終的に自分の気に入った学校を選んだ子どもたちには、誰もがその進路に誇りをもって、胸を張って高校生活を送ってほしいと思っています。
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