「聞く力」~「読解力」よりも大事?
国語道場では、中学生の国語はすべて塾長の私が教えています。国語の記述問題の答えの添削をしていると、こういうことがよくあります。
「うん、書いてくれた答えの前半の部分はとてもいいね。で、後半のここなんだけど、この書き方だと潜水深度100メートルというのがどのような記録なのかがよく分からないよね。人間で100メートル潜るなんてとんでもないことだけど、ペンギンだったらそれほど大した記録ではないんだよね。だったら、『あまり深く潜らなかった』とはっきりと書いたほうが意味がはっきりするよね。よし、それじゃこの後半の部分だけ直してきて。」
「はい。」
と、記述問題の修正のポイントを説明して、解答を修正するよう指示を出して数分後。
「できました。」
「はい。・・・え?全部書きなおしちゃったの?う~ん、さっきので前半は問題なかったんだけど、それがそっくりなくなっちゃったね・・・。」
「はい。」なんて殊勝な返事をして、話を聞いていたようで、実は全然聞けていなかったということです。
千葉県公立高校入試の国語に聞き取り問題が入るようになって、かれこれ10年以上が経ちます。最初これができた当時、学校や塾の先生たちの間で言われていたことは、
「最近の子どもたちは、人の話を聞いていないのが多いよね。」
ということでした。国語の聞き取り問題は、恐らくそういった危機感、背景があって始まったのではないかと想像します。しかしながらどうでしょうね。入試の聞き取り問題はひねった問題が多くなる一方で、人の話を聞けていないお子さんがこの10年で減ったという感じは全くしないです。 やはり、日ごろから子どもたちに対して人の話をよく聞くということを指導していかなければいけないのではないでしょうか。
人の話をよく聞けているかどうかをデジタルに比較することは難しいですが、私の皮膚感覚で、人の話をよく聞いていないお子さんには、聞くことだけでなく読むことへの間違いも多く、長期的に学力・成績が伸び悩む傾向があるように思われます。
例えば、今回の中間テストでは、中1の国語で「話し言葉と書き言葉」という単元がありました。その単元の練習問題に、話し言葉で書かれた文章を書き言葉に直しなさいというものがありました。
デパートの案内所にはいろんな仕事がありますね。(中略)売り場も、常設のところはいいんですが、週替わりの特設売り場なんかもあるので、展示内容が変わる時は注意していますよ。
この分を書き言葉に直せという問題で、こんな風にしてしまうお子さんがいます。
デパートの案内所にはいろいろな仕事がある。(中略)週替わりの特設売り場の展示内容が変わる時は注意している。
最初の文では、話し言葉の「いろんな」を書き言葉の「いろいろな」に直したところはよかったのですが、「ます」のついた丁寧表現を常体に直してしまっているのが余計です。丁寧表現は書き言葉にもあります。設問の指示は「書き言葉にしろ」ということだけですから、丁寧表現まで直すのは当然減点対象となります。
後半の部分では、「売り場も、常設のところは・・・」の部分がまるまるなくなっています。繰り返しますが、この問題は話し言葉を書き言葉に直せと言われているだけの問題ですから、文章を要約したり、内容を書き換えたりする必要はないわけです。つまり、この部分は「売り場も、常設のところはよいのですが」などと直せばよいのであって、それ以外のことをしていれば、それは何をしろと言われているか分かっていないとして、減点されてしまいます。
このような設問の指示の無視は、やはり人の話をまだよく聞けないお子さんに多いです。
何をどうしろと言われていることに無頓着で、自分の思い付きで問題を解く傾向がありますから、当然詰めが甘く、ミスも多い。したがって成績も伸び悩みやすいということになります。
子どもが言われていることをよく聞いておらず、表向き「はい」と明るく元気に返事をするのは、学校での生活・学習習慣によるところが大きいのかなと推察しています。とりあえず「はい」と答えて聞いているふりをしないと、いろいろと不都合が起こる。そこで、あまりちゃんと聞いていないだけど、聞いているふりをするような習慣がついてしまっているのではないか。そんな気がしています。
ともあれ、上のように「聞く力」は学びの基礎として読解力と勝るとも劣らない重要なものですから、私は意識的にそれを鍛えられるように子どもたちに指示出しをしています。例えば、
「それじゃあ、この問題を◯◯してきてね。」
「はい。」
「今僕が指示したことを、言ってみてくれる?」
といった質問を入れることで、人の言うことを聞き流さず、集中してポイントをつかめるよう意識付けをしています。
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