「良い作文」の勘違い
私立高校の合格発表が続いていますが、これまでのところ国語道場の受験生たちはおおむね順調に来ています。
最近の私立高校入試は、一定の内申点があれば入試の事前相談でほぼ合格となる場合が多いです。しかし、ある程度以上の難関高校ではこのような制度がなく、入試本番での実力勝負となります。この実力勝負の入試に挑戦した今年の国語道場の受験生たちも、見事合格を勝ち取ってきました。
そういうわけで、次は公立高校入試に向けて総仕上げに入っています。
国語では、中3受験生は年間を通じていろいろな県で出題された作文問題に取り組みます。この時期は、もちろん千葉県の出題傾向に似た問題を使って練習します。
今日の作文練習で、一人の生徒がなにか悩んでいるようだったので、どうしたのか聞いてみました。すると、
「入試の作文でこんなこと書いちゃっていいんでしょうか」
と、自分の作文の表現や内容が問題ないかどうかを気にしていたようでした。
とてもよい内容だったので、
「これいいじゃない。これを書いちゃってよ」
と励ましました。
国語という教科、基本的に「自己表現」はダメです。読解問題であれば、本文に書かれていることを聞かれているように答えるのが原則です。
「私はこう感じた」とか、「僕はこうあってほしい」とかいうことは、まず聞かれていませんので書いてはいけません。書けばバツになります。
しかし、作文は原則としてそうではありません(自己表現のしようがない、長い記述問題のような作文もまれにありますが)。
というよりも、なんで作文なんてものが出題されるのかを考えてみてください。それは、この学校を受験しに来ている、あなたという人間がどういう人かを知りたいからです。
人物を知りたいがために出されている課題ですから、お題に対して見当違いなものでないかぎり、その人が見えてくるもののほうが評価が良いのは当たり前です。
残念ながら、これをなかなか分かってくれない人が多いんですよね。何か「ちゃんとした」ことを書かなきゃいけないんじゃないかという思い込みの強い人が多い。
だから、誰も彼も「これからは言葉を大切にしていきたいと思います」なんて、優等生ぶった面白くもなんともないような作文を書いてしまう。
こんなつまらない作文、白紙解答がほとんどの学力下位校でもなければ全く評価されませんからね。
今回の作文の課題は、「手紙は手書きで書くべきか」という問いに対し、年代ごとにイエスかノーかの回答を集計したグラフを見て、気づいたことと思ったことを書けというもの。
私もそうだったんですが、「意外だ」という感想が多かったですね。何が意外かというと、デジタル機器に慣れていそうな若い世代のほうが「手紙は手書きであるべきだ」と言う人が増えていて、年長世代の方がそれほどでもないと答えている人が多いことです。
なんでだろう。不思議だなあと考えながら、子どもたちの作文を見てみると、これまた意外なことに「手紙は手書きがいいと思う」という意見が多かったです。
これまたどういうことだろうと思って、作文を出してくれた子どもたちに、手紙は手書きで書いているのかどうか訪ねてみました。すると答えはNo。
わけが分からず、一瞬戸惑いましたが、すぐに子どもたちがなぜそんな心にもないことを書いたのかに思い当たりました。つまり、「入試の作文」に「手紙は手書きである必要はない」なんて書いてはいけないと思い込んじゃっているんですよね。
いやあ、本当にこんなウソ、ムダですからね。大人たちが喜びそうなことはなんだろうって空気読みすぎですって。
「私は手紙は電子メールばっかりです。『手書きのほうが心がこもっている』なんて言う人もいますが、関係ないと思います。例えばこんなことがありました・・・」なんて書けたほうが絶対に評価高いですよ。
いいですか。作文は、その学校を受験しているあなたがどういう人か、先生方に知っていただくためのいい機会ですからね。バリバリに自己表現OKなんですよ。小利口な作文のほうが評価されないってことを覚えておいてください。
では、公立高校前期入試まであと20日。ぎりぎりまで勉強頑張りましょうね。
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