「英語なんかやる前に日本語をまずしっかりやれ」という考え方は間違い
「国語道場」という塾をやっておりますが、そうするとその塾長はどういう考えなのかなと想像されるところもあるかと思います。
国語があらゆる学びのベースであるというのは間違いのないことなのですけれども、「英語なんかやる前に、まずは日本語ですよね」といったお尋ねをいただいたり、同業者の方で、私も英語の早期教育に反対であるのは当然だろうと思っている方がいたりするのですが、それは違います。
日本語も英語も両方やってください。もちろん大変ですけど。
大学院生時代、台北の故宮博物院設立70周年記念展覧会に合わせて、友人たちと台湾を訪れたことがあります。
旅行中、台北の街中で、学校の課題かアルバイトなのか分かりませんがアンケートのようなものをやっている女子高生に、中国語で声をかけられました。
まったくわかりませんので、「え~、 I don't speak Chinese. 」と答えました。驚いたのはその直後。
その台湾JK、にっこりほほ笑んで、今度は流暢な英語でまくし立ててきたのです。こっちは完全に固まってしまいました。
当時はまだ、国際的に日本の存在感は結構あった時代でしたので、「日本の普通」は世界的にはレベルが高い方なんじゃないかなんて思い込みがあったのかもしれません。そんな慢心が粉砕された瞬間でした。
台湾の英語教育のレベルの高さにど肝を抜かれつつ、「これは近い将来大変なことになるな」と予感したものです。
それから20年以上が経ちましたが、日本の英語教育は、何ら成果を上げることなく時間だけが過ぎてしまった感があります。
2015年に行われたTOEFL iBTスコアの国別平均点ですが、日本は相変わらずアジア最低レベルの71点。日本より低いところは、アフガニスタン、カンボジア、ラオス、タジキスタンだけです。
一方で、中国78点、台湾80点、北朝鮮80点、韓国83点、香港85点と、背中も見えなくなりつつある状況・・・。
よく、中学・高校と「あれだけ」英語を勉強したのに、少しも英語が話せるようにならなかったなんて言う大人の方がいますけど、認識違いも甚だしいですからね。
日本の英語教育は量も少なければ、レベルも低すぎます。それが、中・高・大と英語を「あれだけ」やったと思い込んでいる人々が英語を話せない一番の理由です。
大学入試レベルの英語・・・。もちろんこれはこれで大変ですが、そこで必要とされている単語数は数千語で、1万にも達しないと言われています。
これがどれくらいしょぼいかというと、日本語と比べてみればすぐにわかります。
国語道場では「読書指数診断」という日本語語彙力、読解速度テストを実施していますが、日本語語彙力1万語なんて小学生低学年レベルです。日本語と英語で、同じ学齢で必要な語彙数は日本語の方が多いかなといった感じはしますが、それにしても日本の大学入試で必要とされる英語のレベルは易しすぎるというのが現実でしょう。
それなりの大学を卒業された方でも、英文のホームページを辞書なしで読むだけの英語力のある方はほとんどいないはずです。それは、日本の英語教育のレベルを考えれば、むしろそんなものだということになります。
「どうせそんなに英語なんか使わないから、そんなに必死にならなくてもいいんじゃないの」という考え方もあるでしょう。
しかしながら、それは、今の日本の状況ではそうかもしれないということは認識されたほうがいいかもしれません。そう思わざるを得ないのが下の図。
これは国勢調査に基づいて総務省統計局が作った人口ピラミッドで、左が2010年、右が40年後の2050年のものです。いや、もう年金なんか貰える気がしませんね(^^;
40年後ですから私たち今の親世代が80歳くらい(アラ・エイとかいうようになるんでしょうか)になるころですが、その世代にピークが来てしまうという・・・。
人口も減って経済規模も小さくなっていく一方、公的な借金もGDPの2.5倍もあって、どうなっていくんでしょう。分かりませんが、国がもつ気がしないです、正直。
そして何よりも、私たちの子どもたちはそのころどんな生活を送っているんでしょうね。とにかく、どんな形でも生き延びていってくれる力をつけてほしいなと思いますね、私は。
そんなわけで、「英語なんかやる前にまず日本語をしっかり」なんて言うのは、呑気すぎ、危機感なさすぎという感じがいたします。大変だけれども、両方やらせましょう、それくらい必死になった方がいいと思う次第です。
当塾は、「国語道場」ですけれども、小学生低学年から英語の授業も実施しておりまして、受講者もお蔭様で少しずつ増えております。主に、最初は国語、算数ということでご入塾になり、あとから英語を追加されるという方が多いです。来月も、また英語を追加で受講するという方が何名かいらっしゃいます。
思い立った時にお始めになるのがよろしいかと思いますが、やはり英語の聞き取りという点では、低学年からお始めになるお子さんは非常に飲み込みが早いですね。
それから、英語を早くから勉強させると日本語がだめになる?そんな状況見たこともないですね。
まあ、英語も国語も勉強しない人がだめになっていくのはいくらでも見たことがありますが・・・。
私たち親世代が学生の頃は、「英語を勉強して世界に羽ばたこう」なんてよく言われていたかと思いますけれども、私たちの子どもの世代では状況が違います。人間が生きていけるのは日本だけではない、どこででも生きていくために英語が必要、そんな状況になってきているのかもしれません。
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