ただ本を読むだけでは語彙力は伸びません。では語彙力が伸びる読書法とは
国語道場の入り口のドアには、ドアノブがついています。教室に出入りするときは、ドアノブをつかんで回す必要があります。
「何を当たり前のことを言っているんだ」と思われるかもしれませんが、実はこれが分からないお子さんが意外といるのですよ。教室に入ろうとしてドアノブを握る。そしてそれを回さずにドアを押したり引いたりして、「開かない、開かない」と慌ててしまうお子さんは、少なくありません。
私は当初、子どもたちの握力の問題かなと思っていたのですが、犬の散歩中に最近建った家々の玄関のドアを見て納得しました。ドアノブ式の玄関ドアは、近年ほとんどないのですね。ほとんどがレバー式またはハンドル式になっています。
親御さん世代でドアノブを知らない人はほとんどいないと思いますが、いつの間にか私たちは昔から当たり前のように存在してきたものを排除して生きているのですね。そうして子どもたちの世代になると失われていくものがたくさん出てくる。ものが消えていくことによって言葉も失われていくことになります。
私は、このブログでもしばしば、中学校の教科書や授業を完璧に理解するのに必要な日本語語彙力は、約30,000語だということを申し上げています。これは実証的な研究からも明らかなのですが、それでは日常的な生活の中でそれだけの語彙力を身に着けることができるかというと、それはムリだと言わざるを得ません。なぜなら、その多くが現代の生活の中では失われている言葉だったり、あまり見聞きすることのない抽象的な言葉だったりするからです。
そうした言葉を身に着けるためには、読書が必須だということになります。しかしながら、ただ単に本を読むだけでは、効果的に日本語語彙力を伸ばすことはできません。なぜなら、我々は文章を読んでいて、よく知らない言葉が出てくると、無意識のうちにそれを読み飛ばして、前後の流れから話を分かったことにしてしまうクセがあるからです。
例えば、国語道場の読書指導「ことばの学校」では、明治期や大正期に書かれた名作も子どもたちに読んでもらっているのですが、明治・大正期の言葉ともなると、現代語で書かれているとしても、あまりなじみのない単語にたくさん出くわすことになります。
先日は、宮沢賢治の本を一人の生徒が読んでいました。その中で、「ザラメのような雪」という言葉が出てきました。私はその子に、この部分の意味がわかっているかどうか尋ねたところ、その生徒は「分かります。」と答えました。しかし、さらに突っ込んで聞いてみると、やはり「ザラメ」という言葉はよく知りませんでした。つまり、話の流れから、雪が降っているんだなということは分かっているわけですが、「ザラメ」という言葉はよく知らないので、そこはその子はあまり気にせずに読み飛ばしていたということです。
私と同じくらいの世代の方や、料理が得意な人であれば若い方でも、砂糖にはいろいろな粒の大きさのあるものがあって、また「ザラメ」というものがどのようなものかも知っていることでしょう。その言葉を知っていれば、「ザラメのような雪」と言えば、それがどのようなものであるか想像しやすいことでしょう。ちょっと粒の大きい雪がバラバラと降り注いでくる感じかなというイメージがわくと思います。しかし、この「ザラメ」という言葉をよく知らない子どもたちからすると、まあとりあえず雪が降っているのかなといった程度の想像力しか働かないことになるでしょう。同じ文章を読んでいても、実は頭の中では全然違う情景を思い浮かべている可能性があるわけです。
語彙力を増やすことにつながる本の読み方として肝心なことは、自分が読んでいる文章の中で、よく知らない言葉があるという自覚を持って文章を読んでいるかどうかということです。そういうことを特に気にせずに、ただ内容だけをザーッと押さえればいいような読み方をしていても、日本語語彙力が伸びることにはまったくつながりません。いわゆる速読法が国語力の伸長に全く役に立たないのは、このような理由です。
自分の知らない言葉に意識的になり、自己チェックできるような文章の読み方に持っていくことが、日本語語彙力、ひいてはあらゆる学びの基盤となる国語力を伸ばすことのできる読書法ということになります。
国語道場が西千葉地区で独占的にご提供している読書指導「ことばの学校」では、読書ワークが1冊1冊の本に付属しています。その中には言葉のチェックシートがあり、どの言葉を自分は知っていて、どれを自分はよく知らなかったということをチェックさせたうえで、読書に向かわせるというアクティヴィティがございます。このような形で、国語道場ではお子さんの語彙力増強に結び付く読書指導を行っております。
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