2019年10月13日 22:27

やっぱり理科・社会は「勉強」するな

 台風19号は、東日本の広い範囲に大変な被害を引き起こしているようです。台風がすでに通過した今日になって、利根川河口の銚子では上流から大量の水が流れてきたのと満潮のタイミングが重なって、冠水が発生したそうです。もうちょっと上流の香取市では、いまだに避難勧告が出されています。まだまだ厳しい状況にある方々がたくさんいらっしゃると思います。早く平生の生活が取り戻せますように心よりお祈りいたします。

 国語道場のある西千葉地区では、昨日停電が発生しましたが、今は復旧しているようです。15日(火)には通常どおり開校できる見通しです。

 私は、入試問題や授業で使用するテキストに掲載される文章のもとの本を、しばしば読んでいます。今回の台風についての報道を見ていて、以前読んだ富山和子著の『川は生きている』という本を思い出しました。小学生中学年向けの環境学・都市工学の本です。平易な言葉で、非常にわかりやすく川と日本人のかかわりが書かれています。

 そこで印象的だったのは、日本列島に生活する者はほぼみな洪水源に住んでいるという指摘です。日本は、「やまと(山処)」という別名があるように、とても山がちな島々をその領域としています。人々が町を作るなどして生活できる平地は、ほぼすべて川が山を削ったり土砂を堆積させたりしてできた土地です。つまり、ほとんどすべての平地は川が流れていたところということです。したがって、日本人の生活の歴史は、川の恵みとそれがもたらす災害と切っても切れない関係にある。長年の治水事業の成果で、昔のように川が暴れて洪水を引き起こすことはとても減っていますが、今回の台風のように、ひとたび想定を上回るような降雨があれば、たちまち我々の生活域はもともと川であったということを思い知らされます。

 そもそも我々が生活している土地はいつ洪水が起こってもおかしくないところなのだという断言に、大変衝撃を受けました。しかし、改めてこの本の主張の正しさを思い知った気がします。

 休校にイベントの中止が重なって空いた時間ができたため、娘とアマゾンプライムでいろいろな動画を見ていたのですが、面白いものがありました。『はたらく細胞』というアニメ作品です。このアニメ作品はもともと東京MX-TVなどで昨年放映されていたもののようですね。原作まんがも結構高い評価を受けているもののようなので、「塾長、そんなのも知らなかったんですか?」と言われるかもしれませんが・・・(^^;

 主に循環器系の細胞(赤血球、白血球など)を擬人化して、その働きを描いたものです。私が子どものころは、学研まんが『からだのひみつ』なんかで見たものに似ていますね。しかし、最新の科学的知見が反映されていて、単純に白血球が体に侵入したバイ菌を殺しますというレベルのものではなく、免疫系の細胞なら、好中球、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、マクロファージなどなど細かく分かれています。T細胞がキラー系やヘルパー系に分化していくさまが、学園ドラマ風に描かれていたりと、面白くてなおかつなるほどと思わせるような脚本で表現されています。

 これはなかなかおすすめです。コミックをそろえて教室に置いておこうかな。

 毎週日曜日は大河ドラマ『いだてん』。視聴率が低いことばかりが話題になってしまっているようですが、ツイッターなんかを見ていても、リベラルなインテリ層が結構高く評価している感がありますね。1964年の東京オリンピックが実現するまでの人々の努力を追いながら、日本の近現代史がうまくドラマの中に入ってきていると思います。見てこなかった人は、残念としか言いようがないです。教科書や問題集でお勉強しましょうね。

 今回は第39回「懐かしの満州」。噺家の古今亭志ん生って、先の大戦末期に満洲に行っていたんですね。慰問で1か月ほど滞在の予定が、ソ連軍の対日参戦、そして日本の敗戦による大混乱で、2年間も帰国できなかったんだそうです。

 このドラマ、これまでも「毛唐」とか、当時の日本人がちゅうちょなく使っていたけれども、現代では差別的と言われかねない罵倒語が容赦なく出てきますが、今回は「ロスケ(露助)」が出てきましたね。見ての通りロシア人・ソ連人に対する罵倒語で、ロシア語で“ロシア人”を表す русский (ルスキイ)が語源という、なかなか凝ったものです。

 実はわたくしの父方の祖父は、かの南満洲鉄道の従業員だったそうで、そのため私の父は当時の関東州(現・遼寧省)大連で生まれました。ドラマでは、志ん生たちはソ連参戦の情報を得て、いち早く満洲中部から大連に逃れ、そこで終戦を迎えていました。玉音放送が流れたあの時、私の父の家族と古今亭志ん生は、同じ大連にいたことになります。ドラマを見ていて、そこに映っている人々の中に、私の父家族もいるような不思議な感覚を覚えました。

 祖母は、ソ連兵に目を付けられないように頭を坊主にして、男性の格好をして生活していたと言います。「日本が負けたと知ったとたんに支那人がえばりくってね」なんて悔しそうに語っていたこともあります。

 終戦の時、私の父は3歳。でも、当時のことをよく覚えていることを、私はかねがね不思議に思っていました。なぜなら私自身は、自分が3歳の時のことなんて何も思い出せませんからね。どこに大和ホテルがあったとかいった大連の町の様子。日本敗戦を知った町の中国人たちが家に押し寄せて、侮辱的なことを言ったり、金品を奪っていったこと・・・。もしかすると、過酷な体験は幼少期であってもはっきりと記憶に残るものなのかもしれません。

 今回の『いだてん』を見て、敗戦直後の父の家族たち現地に残された日本人たちの屈辱感や恐怖を、リアルに感じることができました。

 でも、ビートたけし演じる後年の志ん生の語りが効いていました。

ソ連軍が本格的に来てからは、ひでえもんだったよ・・・もっと言やあ、日本人が中国でさんざんっぱらやってきたことだが・・・

 入試や定期テストに向けて、問題集を解くとかの勉強はもちろん必要です。しかし、それ以前に、科学や歴史などについて、ひしひしと感じるという体験があるかないかはとても大きいと思います。なぜならその体験は、学ぶことに対する興味関心に直結することだからです。結果的に、学習の定着、ひいては成績に大きな差となって表れてくると思います。

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