2019年04月10日 20:32

ヤバい「国語力」の子どもが増えている?

 国語道場では、中学生の国語は塾長が全員直接教えます。

 国語の問題を解く上で、まず最初に子どもたちに実践させていることは、自分の答えの根拠を説明できるようにすることです。問題を解いてまる付けをしたら正解だった。だけどそれがたまたま当たっただけだったなんていう場合、それは勉強になっていませんし、仮に間違ったとしても、それなりに考えた結果であれば、次につながる勉強になります。

 国語道場には、おかげさまでたくさんのお子さんが通ってくれていますが、生徒が多くなるにつれて、心配な傾向を持つお子さんが世の中には多いのではないかと思うようになりました。もともとそんなものだったのか、それとも最近このような傾向が強くなっているのか定かではないのですが、ここのところ、授業で次のようなやり取りをすることが多くなったように思います。

(塾長、生徒の答案にまる付けをしていて、誤答を見つける)

「ん?この(3)の問題なんだけど、どうして選択肢のイを選んだのかな?」

この選択肢というのが一読して不正解と分かるようなものなのです。

「はい。本文のここに「生活必需品」という言葉があって、イの選択肢にも同じ「生活必需品」という言葉か書いてあったからです。」

「う~ん。そういう考え方だと、例えば本文に「を」という言葉があったら、「を」の入った選択肢は全部正解になっちゃうよね・・・」

 このお子さんの「読み方」、単語拾い読みとでも言ったらいいでしょうか。文章に何が書かれているかをほとんど考えていないんですね。そして、本文と選択肢をざっと眺めて、同じ単語、同じような言い回しを見つけて、それとそれの内容が同じだと判断しているんですね。

 どうでしょう。これをお読みになっているあなたのお子さんの「読み方」も、こんな感じになっていませんか?

 実はこの単語拾い読み、非常にヤバい「読み方」であると指摘されています。そう指摘する代表的な本は、このブログでも過去に何度もご紹介している、新井紀子氏の「AI vs 教科書の読めない子どもたち」です。

 何が「ヤバい」のかというと、近い将来、人工知能(AI)が社会のあらゆる場で人に変わって仕事をするようになると、この単語拾い読みのような「読み方」をしている人は、真っ先に重要な業務から必要とされなくなる可能性が高いからです。

 なぜか。単語拾い読みは、実はAIの「読み方」に近いといえます。AIは機械なので、例えば「1600年、美濃国関ヶ原で徳川家康率いる東軍は、石田三成を中心とする西軍を破った」という文章を「読ん」でも、それが何を意味するのか人間のように理解できるわけではありません。しかし、この文章に関する問題を勉強ロボットに解かせると、「1600年」とか、「関ケ原」、「徳川家康」などのキーワードを使ってデータベースを検索し、正解を出すことができてしまいます。つまり、AIは単語拾い読みの名人なんですね。

 AIというかコンピューターですが、膨大な量の計算が得意ですね。人間が同じような計算をやったとして、コンピューターに勝てますか?勝てるわけがないですね。単語拾い読みもコンピューターの得意技です。同じように人間が単語拾い読みをやって、コンピューターに勝てるわけがないですよね、ということです。

 文章を与えられてもそこに何が書いてあるかを考えず、何となく視線をその上に滑らせて目についた単語をチェックするだけのような読み方をしていて、それで自分が文章を「読んでいる」と思い込んでいるような人間。そんなことをしていたら、近い将来なにもできる仕事がなくなってしまいますよということです。産業革命が起こって機械織が始まると、手織り業の人々が一斉に仕事を失った。それと同じようなことが起きようとしています。

 本当の読解力については、実はずっと前から答えは出ています。それは要約力です。文章に書かれていることを自分の言葉で簡潔に過不足なくまとめて話したり書いたりする力です。「国語の読解力を鍛える」というときに、妙な受験テクニックのようなものは不要で、文章を要約できるようにしていけばよいのですよね。

 で、重要なことに、コンピューターはこの要約ができません。あたかもできているかのように振る舞うことはあります(Wordにもそんな機能がありますね)が、実際に書かれている内容をコンピューターが理解できるわけではないので、本質的には不可能です。

 例えば、こんな文章があります。

①「幕府は、1639年、ポルトガル人は追放し、大名には沿岸の警備を命じた。」

②「1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。」

 この2つの文の内容は同じですか、それとも異なっていますか?もちろん異なっていますね。②の文、大名が幕府に命令なんてできるわけないじゃないですか(笑)

 ところが、コンピューターはこの2つの文が全然違う内容であることを判定できません。なぜならどちらもキーワードが全く同じだからなんですね。コンピューターは単語拾い読みの名人です。単語しか見ていません。だからこの2文が同じ意味であると判定してしまいます。

 しかし、恐ろしいことに、これと同じ問題を千数百人の中・高生の解かせたところ、中学生の4割が、上の2文は同じ意味の文だと答えたそうです。このように子どもたちの多くは、AIと同じ単語拾い読みをしちゃっているんですね。ヤバいです・・・。

 上にも述べたように、文章読解力の要諦は、要約力です。ですから国語道場では、生徒たち一人一人にひんぱんに口頭で文章の内容をまとめてしゃべらせています。この際、上手い下手は問いません。多少日本語としておかしなところがあっても、おおむね合った内容が自分の言葉で言えていれば良しとします。

 なんでかというと、あまりにちゃんとした要約を求めると、そればっかりに学習時間を取られてしまったり、まったく進められなくなってしまうお子さんが出る可能性があるからです。これは、学力に関係ありません。国語が苦手でちゃんとした要約ができないというお子さんも出れば、学力は高いがまじめで完璧主義でようやくが進められないというお子さんも出てしまいます。

 ですので、多少つたなくても自分の言葉でだいたいの内容が言えていればよいという風にしています。こうすることで、普段から文章を読むときに、書かれていることを頭の中で自分なりに理解するようにする習慣をつけさせているのです。

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