三つ子の魂百まで
船橋の実家で、父が、パソコンからプリンタに印刷できないと言うので、手伝いに行った。
パソコントラブルバスターぶりを発揮し、早々に問題を解決すると、若いころに買い集めて、実家に今まで放置していた昔のLPレコードを漁った。
ロジェストヴェンスキイという指揮者が、モスクワのボリショイ劇場の首席指揮者だった時に録音された、チャイコフスキイの「白鳥の湖」全曲。大変な名演だが、未だにCD化されていないようだ。
久々に、実家のプレイヤーで第3幕の終わりから最後まで聞く。総じて速めのテンポのきびきびした演奏で、ソ連オケらしいパワフルな音色。やっぱり素晴らしい!
さらに探していると、私の幼少期に、親が情操教育で買ったピアノ曲を中心としたレコードセットが保管されていることに気づいた。たしか、小学校に入る前後くらいの年齢の時に、就寝時にかけて聞いていたものだ。
改めてどんな演奏が入っていたのか見てみると、ソ連の音源が中心であった。
左上のピアノを弾いているハゲの人は、スヴャトスラフ・リヒテルというソ連のピアニストで、右下に小さく映っているハゲの人は、エヴゲニイ・ムラヴィンスキイというソ連の指揮者。
要するに、私は幼少期からソ連出身の世界的演奏家の音を聞いて育っていたということなのね。
小・中学校時代は、自分から積極的に音楽を聞くということはなく、もっぱらゲームばかりやっていた。それが、高校で吹奏楽部に入り、それをきっかけにクラシック音楽を大量に聞くようになったのだが、なぜかカラヤン指揮のベルリン・フィルなどといった西側の演奏が肌に合わず、ソ連やチェコの音楽家の演奏に惹かれ、そのレコードやCDを買いまくっていたのだけれども、その源流は、こんな幼少期の、意識的には忘れ去られた経験にあるのかもしれない。
さらにレコードのラックをひっかきまわしていると、自分としては非常に思い出深いLPに再会した。
これは、高校の吹奏楽部の先輩からもらったもの。モスクワ放送交響楽団(現・ピョートル・イリイチ・チャイコフスキイ記念大交響楽団)の演奏を集めたレコード。
何が懐かしいかというと、ロシア語の文字に初めて触れたものだったということ。
文章は何が書かれているか分かりようもないのだが、人名が書かれているところは分かるので、その文字を一つ一つたどっていくと、どの文字がどういう音なのかがだんだん判明してくる。
上の例だと、С. ПРОКОФЬЕВ (1891-1953)は、レコードを聞けばこれがプロコフィエフの曲であることが分かるので、その名前だろうと目星が付く。一文字一文字見ていくと、どうも、Пという文字は英語のP、ロシア語のРという文字は、紛らわしいけれども英語のR、ОやКは英語と同じで、ФはFに当たるらしいといった感じで、文字の音価が少しずつ明らかになってくる。
この、「ロゼッタ・ストーン」ごっこに高校時代夢中になったおかげで、大学でロシア語の授業を履修して、初めてきちんとロシア語を教わるときには、文字だけはほとんど読めるという状態になっていた。
ここからロシア語の専門家にでもなっていればもっとかっこよかったのだろうけれども、その辺は仕方なし。複数の外国語をかなりガチで勉強したことや、ソ連の学校教育を経験したことは、今の塾という仕事で結構役に立っているので、それはそれでよかったと思っている。
1枚のLPレコードが、大学で専門的に勉強することにつながっていったり、さらにその1枚のLPレコードに出会う私の趣味嗜好が、幼少期に聞いていた音楽とつながっていたりする経験を思うと、子どもにどういったものを触れさせていくかということは、本当に重大なことだなと思った次第である。
実家で漁ったLPを大量に持ち帰ったが、私の家には肝心のLPレコードプレイヤーがないので、新しく買ってこよう。
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