2019年07月08日 23:48

上皇陛下の伝記まんがを待合の本棚に置きます

 お子さんが勉強ができるようになるためには、膨大な時間と労力をかけて学ぶことは当然です。しかしながら、その前段階として、お子さんが日ごろからいろいろなことに疑問や関心を持ち、想像力を働かせたり、面倒がらずにあれこれ考えたりする人間であることが不可欠です。そのためには、学習教材だけでなく様々な玩具類や漫画などに触れることは大切だと考えています。

 そのようなわけで、国語道場には漫画やパズルなどを教室に置いておりまして、休み時間などに子どもたちが自由に触れられるようにしています。

放っておくと、いつの間にかルービックキューブなんか6面そろえてしまうようになります。子どもの力はすごいですね。

 今日は、子どもたちが休み時間や授業の待ち時間などに読むマンガコーナーに新しい本を買ってきました。話題の最新刊『小学館版学習まんがスペシャル平成の天皇』です。上皇陛下の伝記ですね。

 作画は少々残念な気が・・・。これが美智子さん(^^;

 作画担当は小林よしのりさんに頼むというわけにはいかなかったんですかねえ。それはムリか。

↑『ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論』/小林よしのり著より。絵うまいですね。

 皇太后(上皇后)美智子様は、周知のとおり大変文学に造詣が深く、このブログでも実は6年ほど前に、陛下の読書についての理解のすばらしさをご紹介したことがありました。

 上皇陛下というと、個人的にはなんといっても計画停電の時のことが深く思い出に残っております。

 上皇陛下は「平成流」と呼ばれる国民との触れ合いが印象的でした。それは大変に素晴らしいことだと思ってはおりましたが、自分自身とはあまりかかわりのないことだとも考えていたものです。

 2011年、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故による電力不足が起きた時です。東電管区内で計画停電が行われました。国語道場の所在地も計画停電地区に指定されてしまいました。計画停電が夜の授業時間にかかる場合は、休校とせざるを得ませんでした。このときは、自分のような小さな生業をしているような者は、日本全体からすればあってもなくてもよいものだと言われているかのような、何とも悲しい気持ちになったものです。

 ところがそのころの報道で、なんと皇居では、両陛下のご意向により、計画停電の時間に合わせて自主的に電気を切っていたということを知りました。自分のようなちっぽけな国民にまで大御心は行き届くものなのだと、涙が出るほど感動し、大いに励まされる思いがしました。同時に、陛下の人間の心に対する共感の力に感服しました。

 上皇陛下が真に尊敬に値する人物であることをまた別の機会に再認識したのは、「退位の意向をにじませた」と言われるビデオメッセージを聞いた時です。そこで陛下は、

日本国憲法下で象徴と位置付けられた天皇の望ましい在り方を、日々模索しつつ過ごしてきました

と述べられましたが、私はこの部分に衝撃を受けました。

 「象徴天皇」という言葉。私は中学の公民の授業で最初に習ったと記憶しますが、正直よく意味が分かりませんでした。《象徴》は英語の symbol にあたる語ですが、人間である天皇が何かのシンボルであるということが全く理解できませんでした。まあ、世の中にあふれるあまり意味のない文言の一つなのだろうということで納得し、ただその言葉をテスト対策として空虚に記憶していました。

 しかし、上皇陛下は、確かにその人生において、善良なる日本人の最高のあり方を示してこられたように思います。それは、皇太后陛下の美智子様と結婚されて築かれた家庭人として、災害などで傷ついた人に寄り添う人間として、そして先の戦争で日本が引き起こした戦争の惨禍とそれに苦しめられた内外の人々に向き合う人間としてなどにおいてです。上皇・皇太后両陛下の慰霊の旅を通して、例えば私はフィリピンにおける戦争を、恥ずかしながら初めて知りました。マニラの戦いでは50万人もの民間人が犠牲になったということですが、これは陛下の慰霊の旅がなければ、今も知らないままだったかもしれません。そして、そのように良き日本人としての最も優れたありかたを示すことが、日本国民の象徴としてどうあるべきかを模索してこられた結論だったのではないでしょうか。

 かのビデオメッセージで、陛下が、憲法に規定された象徴としての自らの在り方を徹底して考え抜き、それを実行し続けてこられたことを知り、その覚悟と困難に即座に想像が及ばず、恐ろしさまで感じてしまいました。憲法に「戦力を放棄する」と明記しながら世界的にも有数の軍事力を持ち、あまつさえそれは違憲ではないなどとごまかして生きている連中とは全く次元の違う生き方です。

 明日から国語道場の本棚に並ぶこの上皇陛下の伝記ですが、天皇の国事行為や公務について非常に具体的に描かれています。何も知らない子どもたちの中には、「天皇なんて何もしないでただ座ってるだけで、ぜいたくな暮らしをしてるんでしょ」なんてことを言う者がいたりします。基本的に天皇は激務です。そういうこともよくわかるように書かれています。

 この本を通して子どもたちが天皇の制度についていろいろな側面から知り、それがこれからどうあるべきなのかなどについても考えるきっかけになればよいと思っています。

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