低学力は低学年で固定化する
日曜日は、読書指導「ことばの学校」の研修会に参加してきました。「ことばの学校」の運営上役に立つ情報から、これからの国語教育のあり方といった大局に立ったお話まで、とても有意義な研修でした。
研修会では全国の「ことばの学校」導入塾の先生方とお会いすることができました。
参加者の中に、これから「ことばの学校」を導入しようと検討している方がいました。「小学生の高学年や中学生に勧めていこうと考えています」ということでした。
思い返すと、私も「ことばの学校」を導入しようとしていた当初は同じような発想でした。だいたい塾なんかに通い始めるのは、公文とかチャレンジとかをやめた小学校高学年とか中学生からでしょうなんて思っていたものです。
しかし、この「ことばの学校」による読書指導を続けていくうちに、小学校低学年からの個々の能力に合わせた体系的な教育の重要性を痛感するようになりました。なぜなら、低学年児童の学力格差はすでに非常に大きく、その格差は高学年、中学に進んでもそのまま引き継がれていることに気づいたからです。
ではとくにどのような教育が小学校低学年児に必要かというと、それは何といっても日本語に関するものです。
ポイントは、1つは語彙力の強化、2つ目はちゃんと読むことと聞くことの習慣化です。低学年児童の低学力の原因については、まず言葉を知らない、書いてあることを読まない、そして人の話を聞いていないの3点でほぼ説明可能です。
学年が進むにつれて算数は高度化してたくさん練習することが必要になり、社会や理科では覚えるべきことが増えていきます。したがって小学校高学年や中学の段階では、語彙力や読む・聞く習慣を改善しただけでは全体の成績を向上させることは難しくなってきます。
逆に、低学年では算数といっても大したことは教わっていませんし、理科・社会はないに等しいですから、語彙力や読む・聞く習慣を改善するだけで全体の成績を上げやすいです。また、書かれたことをちゃんと読む・人の話をちゃんと聞く習慣が早い段階で身につくとその後の勉強も習得しやすくなりますから、学年が進んでもよい成績を収めるポテンシャルが高まります。
小学校高学年や中学校に入ってから塾に通い始め、成績をグンと伸ばすお子さんは実際いますが、そのようなお子さんはそれまでに必要な語彙力、書かれたことをちゃんと読む・人の話をちゃんと聞く習慣がすでに身についていて、あとは技術的な練習だけが必要だったというケースだったのでしょう。逆に、10代になってから塾に通い始めたが、なかなか成績が上がらないお子さんは、まず語彙力・読む・聞く習慣がきちんと身についていません。
この辺の事情について、最近大阪府箕面市のビッグデータを日本財団が分析したものが発表されたのですが、これが大変興味深かったです。
箕面市には、子どもの貧困を支援するために「子ども成長見守りシステム」というものがあるそうです。このシステムでは、箕面市に住む0歳から18歳までの全ての子どもについて、生活保護や就学援助を受けているかどうかや、学力偏差値などを把握することができるそうです。今回の調査は、2014年上半期から2016年下半期まで3年間にわたって25,000人を対象に行われたということです。調査報告を見て、私が「ことばの学校」などによる国語指導を通して皮膚感覚でつかんでいたことが、実証的に明らかにされたと思いました。
この分析調査の主眼は、子どもの家庭の経済状況と学力との関係についてにあります。ただ、家庭の経済状況と子どもの学力との相関はすでによく知られたことで、あまり目新しい話ではありません。さらに、実際に子どもの学力とより相関性が高いのは、家庭の経済力よりも親の教育水準であることも最近は明らかになってきています。
この分析の中で私が注目したのは、現在低学力に甘んじている子どもが、翌年成績を伸ばすことができたかどうかをまとめたものです。この分析の中では、ある年の学力偏差値が45以下の子どもの中から、翌年の学力テストで偏差値45を超えることができた割合がまとめられています。
案の定、低学年はやはり強いです。小学2年生の場合、その時点で偏差値45以下であっても、そのうちの42.2%は翌年の学力テストで45を超えることが出来ました。
しかし、その割合は急激に下がり、小4で偏差値45以下の児童が翌年にそれを超えることができた割合は27.5%にとどまっています。
その後成績が上がる割合は緩やかに高くなり、中1で偏差値45以下だった生徒が翌年にそれを上回ることができた割合は34.5%まで高まります。
しかし、中学2年生の低学力層が翌年に成績を上げられた割合は一層急激に下がり、23.9%しかいなくなってしまいます。
全体的に、低学力は低学年のうちに克服しておかないとその後改善できる見込みはどんどん小さくなり、はっきり言ってしまうと中2まで放っておいたらもはや手遅れと言えるのかもしれません。
国語道場では小学校から来てくれている生徒の場合、中2→中3で成績がグンと伸びるので、上の調査とは違っているのですが、これは小学生から国語道場に通わせるという形で、ご家庭がお子さんを中2まで放置していないからと言えるでしょう。
このようなわけで、低学年の時点で、例えば学校のテストレベルで100点が取れないなど、これはちょっとまずいかなとお感じになるようでしたら、お早目に対処されることをお勧めします。
あれこれやられるよりは、日本語に関する教育が一番効果的です。もちろん、最も優れた教育メソッドは、国語道場がご提供する「ことばの学校」です。
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