2019年04月25日 20:53

作文を「書ける」ようになる唯一の方法

 ネット雑誌の記事にちょっと面白いものがありましたので、ご紹介したいと思います。

東大生が教える「文章がスラスラ書ける」凄ワザ

 現役の東大の学生さんが書いているんですね。ふむふむ。作文(アウトプット)ができるようになるためには、そもそも頭の中に習熟した知識や情報があることが必要で、書けない人はそれができていない。だから、工夫して様々な情報知識をインプットしていくことが大切ですよということですね。

 言っていることは確かにその通りなので、ご興味のある方はこの著者の言うとおりに実践してみるとよいかもしれません。

 しかし、子どもたちに日々書くことを教えている立場の私としては、上の文章の別のところに興味を引き付けられました。それは、この著者が、なぜ自分が文章を書けるようになったのか、本当の理由に無自覚であることです。彼は、自分が知識情報のインプットが上手であるために、文章を書くアウトプットが上手になったと考えているわけですが、もっと本質的な問題は別にあります。

 それは、上の文章の中から抜き出すと、まさにこの部分です。

「かく言う僕も、昔は500文字程度の文章を書くのに3時間かけていた」

 彼は、このことを、以前は自分も文章がなかなか書けなかったという文脈でこれを語っています。しかし、それは私に言わせれば間違いです。この著者は、「500字程度の文章」を書くのにそれだけ時間と労力をかけられる人だったから、今は文章を以前よりは早く書けるようになったのです。このことは、知識や情報を上手にインプットするということよりもはるかに重要です。とくに、今現在「文章が書けない」と思っている人たちにとっては。

 まあ、だいたい偉いですよね。原稿用紙で1枚とちょっとくらいの文章を書くのに何時間も粘るなんて。それだけの根性のある人ってどれくらいいるんでしょう?

 誠実に、自分が伝えたいことを探り、それに合った言葉を見つけて紡ぎだし、さらに人に分かりやすく伝わるように出てきた言葉を磨くような手間を惜しまないということですよ。そういう努力を積み重ねていれば、必ず書けるようになります。

 お子さんが「作文が苦手だ」「文章が書けない」というご相談をしばしば承ります。

 これは、ほとんどの場合、お子さんが作文に書くことをなかなか思いつかないとか、書くのに時間がかかるということで、それを「苦手だ」とか、「できない」と言っていらっしゃるわけですね。

 うーん。まず、お子さんが文章を「すぐに書けない」とか「時間がかかる」ということをもって、「できない」とか「苦手だ」と認識するのを止めることが肝心です。

 私は、塾生たちにたまにこのようなことを言うことがあります。

「ブラームスは交響曲第1番を書くのに20年を要した。『ピアノの詩人』と呼ばれるショパンも、創作に苦しんで泣き叫んで命を削りながら作品を書いていたと恋人のジョルジュ・サンドは言っている。だから、私たちのような普通の人々がものを書くことに苦心惨憺するなんてことは、何ら驚くことではないんだよ。」

 もちろん、行数を目安に書くとか、出来るだけ具体的に書くとか、いろいろテクニカルなことも国語道場では子どもたちには教えていて、誰でも入試作文くらいはさっさとかけるようにも指導していますが(^^)

 いずれにしても、「すぐに書けない」というのは、お子さんのまじめさのしるしで、そういう人の方が後伸びすることも多いので、それをもって「苦手だ」とか「できない」などと決めつけて、子どもに苦手意識をムダに植え付けるのだけはやめられたほうがいいです。

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