2019年07月21日 22:54

「優秀な子どもが通う学校」と「そうでない学校」との間には、部活の活動時間に学校間格差があることをどう思われますか

 塾・予備校向けに発行されている情報誌に、こんな図が掲載されていました。

 1日の部活動の時間と、全国学力テストの平均点との相関をグラフで表したものです。部活動の時間が1日1~2時間というグループが最も平均点が高く、それよりも活動時間が長くなるにつれて点数が下がり、3時間以上になると、1~2時間以上のものよりも10点近く平均点が低いということがわかります。

 上のとおり、最も平均点が低いのは、活動時間0のグループです。部活を何もやっていなければ、その分勉強をするのかというと、決してそんなことはないということもあるでしょう。また、何もしていないというと、あまり活発ではない子どもたちが多いのかなということも想像されます。活動的でない人間は知能も低い傾向にあることは、近年の調査でも明らかなところだそうですので、その事実とも符合するように思われます。

 要は、自分の好きなことにほどほどに取り組むことは大切だということでしょう。やりすぎは言うまでもなくいけませんし、好きでやっていることもないとなると、何が楽しくて生きているんだということになってしまいます。

 問題は、西千葉地区の公立中学校でも部活動のやりすぎが常態化していることです。

 ご存じの方も多いかとは思いますが、千葉大附属中の部活動の活動時間は短いです。私には、趣味と勉強とのバランスという点で理想的であるように感じられます。

 まず朝練なし。周辺中学校と比べて早い完全下校時間。平日2日と土・日いずれかが部活動休養日になっていること…。

 こんなに活動時間が少ないんじゃ強くならないだろうと思う人もいるとは思いますが、それに対してはだからどうしたと言いたいですね。

 毎年夏になると、私は吹奏楽コンクールに出かけて、主に国語道場生のいる学校の演奏を聴きに行きます。その中で千葉大附属中のものも聞くことがあります。

 彼らの演奏を見ていて印象的なのは、舞台上の動きに自主性がにじみ出ていることです。生徒たちが、先生に言われて動いているのではなく、主体的に部活動を運営しているのだろうということが感じられます。

 人生100年時代のあるべき部活動を考えたときに、大切なことは「下手の横好き」を作ることです。私も含めて、大半のプレイヤーなんて大したことはないんです。でもそれでいいではないですか。これからの部活動は、一生楽しめる趣味を作る場であってほしいと思います。強豪校というところの出身者でも、高校卒業とともにやってきたことから離れてしまう人は少なくありません。理由は、ほとんどの場合「部活で燃え尽きたから」です。こんな部活こそ、私に言わせれば意味がないと思います。

 一般公立中学校が、ほとんどの場合千葉大附属中に比べてより長い部活の活動時間をとっているということは、趣味を楽しむということ以上に深刻な問題をはらむことになります。もちろんそれは学力の問題です。国の調査で、長すぎる部活動の時間と低成績との関係が明らかにされているにもかかわらず、それがあたかも容認されているのはどういうことなのでしょうか。

 入試によって選抜された学力の高いと考えられる子どもたちが、適切な時間部活動を楽しみ、学習時間を確保しているという現実があります。それに対し、学区内の子どもなら学力選抜なしでだれでも入れる学校の子どもたちがいます。彼らは、高校受験で全く同じルールで学力選抜入試を受けます。さて、一般公立中学校は、部活に関してはどのような運営をするのが適正でしょうか?

 普通に考えたら、それは附属中と同様に、部活の時間はほどほどにして、十分に学習時間を確保できるようにするのがよいだろうという結論になるのではないでしょうか。子どもに過度な負荷をかけることが善であると今どき信じているような人でなければ、普通はこう考えると思うのです。

 しかし、現実はそうではない。一般公立中学校の生徒たちは、学力のアドバンテージがあまりないと考えられる状況で、より長時間の部活動を課せられ、学習時間をゴリゴリ削られています。この事実をどう考えたらよいのでしょうか。

 これについての合理的な説明は、やはり学校間の格差が容認されてしまっているということではないかと思いますが、どうでしょうか。露骨な言い方をすれば、附属中は優秀な子が多いから特別扱いで、それ以外のところはまあいいんだと、多くの人が無意識に思い込んでしまっているのではないでしょうか。

 周辺の中学校では、いまだに部活動の活動時間の制限に消極的なところがあると聞きます。部活動には休養日を平日1日、土・日のいずれかの1日も受けなければならない、平日の活動時間は2時間、週末でも3時間を超えてはならないというのは、文科省、千葉県教育委員会が定めているガイドラインです。学校がこうしたルールを守らないことも言語道断ですが、上に申し上げたような学校間の格差を無意識的にせよ容認しているのであれば、教育者としての良識を疑われても仕方がないことだと思います。

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