2018年02月26日 13:11

千葉の子どもは時代劇を見たほうがいい理由

 こんにちは。西千葉(千葉市)の個別指導塾「国語道場」の塾長、庄子です。

 最初に↑こういう自己紹介みたいな文言が入ったブログが多いなということに最近気づいたんですが、これって何かいいことがあるんでしょうか?

 突然ですけれども、「西郷どん」、ご覧になっていますか?あ、NHKの大河ドラマです。

 歴史に詳しい人から見ると、かなりツッコミどころ満載のドラマのようですね。

 ま~、確かに西郷さんの実家にジョン万次郎が預けられるとか、しかも貧しい下級武士である大久保正助(利通)の家に当時それほど流通しているとは思えない英語の字引があるとか、ぎょっとするようなところは多々あります。

 とは言え、今の日本のテレビ事情で、これほどのキャスト、スタッフを使ったそれらしい時代劇を見るとなると、NHKの大河ドラマくらいになってしまうのも事実。

 私が中学生くらいの時にはけっこうたくさんあったんですけどね、時代劇。

 毎週月曜日はTBSで明るいナショナル提供の「水戸黄門」、「大岡越前」、「江戸を斬る」。「大岡越前」の加藤剛さん、かっこよかったな。火曜日は日テレでしたかね。「長七郎江戸日記」。長七郎といえば里見浩太朗。テレビ朝日だと「暴れん坊将軍」、「遠山の金さん」。歴代金さんの中で一番好きなのは高橋英樹ですが、緑町中出身なんですよね。テレ朝は殺陣がとにかくかっこよかった印象。「暴れん坊」のマツケンさん、高橋英樹のようなパワフルで速い立ち回りがよかったです。

 変わったところでは、金曜日の10時からあった「必殺」シリーズにはけっこうハマりましたね。昔は土曜日も学校がありましたが、翌日は学校でもよく必殺!仕事人ごっこをやりましたよ。ペンとかを指でくるっと回しながら「シュフィン!ジュブリ」とか言って友達の首の後ろを刺すんです。

 テレ東と言うか東京12チャンネルも、「大江戸捜査網」という傑作がありますね。フジテレビは、古くは「銭形平次」ですが、20年くらい前まで「鬼平犯科帳」とか、「御家人斬九郎」とかかっこいい時代劇を作っていました。

 なんといっても私が高2の時に放映されたNHK大河ドラマ「独眼竜正宗」が年間平均視聴率39.7パーセントを記録したという時代。なんだかんだ多くの人がまだ時代劇をよく観ていたわけですよ。

 今年の大河「西郷どん」、いささかう~んというところがあるのも確かですが、トンデモ度合いは水戸黄門が諸国をめぐったり、徳川吉宗が旗本の三男坊・新さんを名乗って江戸の町を徘徊しているとかに比べれば、かわいいものでしょう。

 「というか、何で時代劇なんか見なきゃいけないのよ」と思われているかもしれません。

 いや全くその通りです(^^;

 しかしながら、実はですね、どうも千葉県の公立高校入試って、時代小説が好きみたいなんですよね。

 ご存じのように、今年平成30年度の前期入試にも、徳川光圀(水戸黄門)の少年時代を描いた小説が出題されました。

 手元の過去問を調べてみますと、平成26年度には、前期・後期ともに文学的文章が時代小説でした。もうちょっと前だと、平成18年の当時の一般入試で出題されています。頻度としては5~6年に1回は時代小説が出題されているといったところでしょうか。

 現行の光村図書版国語教科書にも森鴎外の「高瀬舟」が掲載されていますから、時代小説が数年おきに出題されるのは当然といえば当然なのかもしれません。

 国語道場の授業でも通常の授業で時代小説を何度か扱いますし、中学校の定期テスト範囲に「高瀬舟」が入れば、当然それも学習します。

 しかし、今の中学生、本当に江戸時代のものを知らないです。

 「高瀬舟」に「鳥目(ちょうもく)」という言葉が出てきます。この鳥目とは、銭のことです。

 近代以前、銅銭には多くの場合四角い穴が開いていました。銭形平次が投げる寛永通宝もそうですね。その穴の開いた銭が鳥の目に似ているので、鳥目という呼び方をしていたようです。

 子どもたちも学校の授業で習って、その鳥目が硬貨のことだということが分かっていても、どうもそれがどんな感じだったかいまいちわかっていない。

 「高瀬舟」の中では、「二百文の鳥目を戴きました。それをここに持つてをります」という一節が出てきます。時代劇で見たことのある人であれば、200枚も銅貨があるのだから、重ねて穴にひもを通して持っているのだろうと想像がつくでしょう。しかし、ほとんどの中学生はそういうイメージが浮かばず、まあなんかお金をたくさん持っているのだろうくらいに理解しているようです。

 先日行われたばかりの前期選抜学力検査の問題文では、病床に伏している幼い徳川光圀の許を兄が見舞いにきて、話をしている場面が描かれています。

 こんな文章に当たったとき、例えば子役が出ている時代劇でも見たことがあれば、ああ、座敷の真ん中に真っ白い絹の布団が敷いてあって、お兄さんは枕元に胡坐をかいて座っているのかな、子どもだからまだ前髪があるのかな、とか情景が浮かんだことでしょう。

 このように、読解力には、ただ単に言葉だけで書いてあることを理解する力だけではなくて、これまでに見たり聞いたりしたことのあるイメージを援用して、情景を思い浮かべるような力も含まれるので、やっぱりいろいろなイメージに触れられるようにしていくのは大切だと思うわけです。

 それから、これは千葉県に限りませんが、やはり語彙力の問題ですね。語彙力の少ない子どもは、そもそもたくさんの言葉に触れていません。

 語彙力は、周囲の大人たちが使っている言葉だけでなく、ラジオやテレビの番組で使われている言葉に触れることによっても形成されていきます。こうして、意味はよく分からないけれども、なんとなく見たり聞いたりしたことのある言葉が少しずつ子どもの頭の中に蓄積されていきます。

 国語の勉強によってつけられる語彙の力は、そういう意味では知識の定着の時に役に立つ程度でしょう。つまり、国語の勉強で、今までなんとなく聞いたことのある言葉の漢字を練習したり、意味調べをしたりする。そうすることで、「ああ、この言葉って、今までなんとなく知っていたけど、正しくはこういう意味だったんだ」と腑に落ちる。そうすることで、自分が使える言葉として定着するということです。

 同じように漢字を練習したり辞書引きをしたりしたとしても、それまでにそんな言葉を聞いたこともないという子どもだと、自分の言葉として使えないばかりか、そもそも覚えておくこともなかなか難しいということになるでしょう。

 時代劇のように、日常的に使われていないような言葉がたくさん出てくるようなドラマに、子どもたちをできるだけ触れさせることは、家庭の教育力をさらにパワーアップさせることにつながるでしょう。

 先日の「西郷どん」の中で、「二才(にせ)」という言葉が出てきました。《若者》の意味の薩摩方言だそうです。

 若い人の未熟をののしる、「青二才」という言葉があります。調べたことがないのでよく分かりませんが、果たして今の中学生、どれくらいこの「青二才」という言葉を知っているでしょうか。もしお子さんが「西郷どん」の中でこの「二才」という言葉に出会っていたら、ああ、そういえば若い人のことを「青二才」とかいうなという調子で、言葉の力が伸びていくと思いませんか?

 ご家族で時代劇鑑賞、おススメです。公立高校入試に出やすいからということもありますが、いろいろなジャンルの言葉に子どもを触れさせることは、あらゆる学びの基盤となる国語力を伸ばすことにつながります。

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