塾に行くとバカになる?
舞田敏樹さんという教育学者のブログに、「無解答率」というとりわけ興味深い記事がありました。
小6の全国学力テストの調査結果では、問題ごとの無解答率が集計されています。
「無解答率」とは、解答欄に何も書かれていなかった割合ということです。易しい問題や選択肢から記号を選ぶ問題なんかでは無解答率は低く、つまりなにか答えが書いてある割合は高くなり、難問や記述問題、ひねりの効いた問題などではそれが高くなると考えられます。
面白いことに、この無解答率が都道府県ごとに結構ばらつきがあるのですね。国語Bでの無解答率が最も低い秋田県では3.5%、最も高い三重県では11.4%と、実に8ポイント近い差があります。
舞田さんの記事の面白いところは、この無回答率と通塾率(塾に通っている子供の割合)との相関を調べてあるところです。そこで、実に驚くべき結果が紹介されています。
それは、通塾率が高くなればなるほど無解答率が高くなる傾向があるということです。つまり、塾に通っている子どもの割合が高い県の子どもたちほど無解答にしてしまう問題が多くなる傾向あるということですね。
工エエェェ(´д`)ェェエエ工それじゃ塾に行くとバカになるっていうことなの?
なんて単純な発想をされる方は、国語道場塾長ブログをご覧の方の中には少ないとは思いますが、一応文系の私が統計の見方を簡単にご説明させていただきましょう。
統計データというのは、因果関係を示すものではないと言われています。
因果関係というのは、原因と結果のつながりということですね。例えば、この場合ですと、通塾率が高い都道府県では無解答率が高い傾向があるというデータがあるわけですが、それでは塾に通うとそれが原因でテストで無解答が多くなるというのが因果関係ですが、統計データはそういうことを示しているのではありません。
そうではなくて、このデータから言えることは、通塾率の高い都道府県に住んでいる子どもたちは、どういうわけかテストで無解答にしてしまうことが多いということだけなので、原因は塾とは直接関係がないことも大いに考えられるわけです。
どういうことかというと、通塾率の高い都道府県は、全般的に人口が多く、大都市の多いところです。だから、今回はたまたま通塾率と無解答率に強い相関関係がるようなデータがとれたけれども、無解答率の原因は塾に行っていることではなくて、都会か田舎かの問題かもしれないわけです。
もっと変なことを言うと、通塾率が高い都道府県は、所得が高い地域でもありますから、ひょっとしたら金持ちの子どもは無解答が多いなんてことがあるかもしれません。こんな珍説も、間違っているかどうかはこれだけではなんとも言えません。
ブログ筆者の舞田さんは、「点数主義の弊害,通塾による家庭生活の浸食」と、塾が原因の一つではないかと踏み込んだ仮説を書いています。大いに説得力があると私も思います。
その他にも、どうですかね、どんな仮説が考えられるでしょうか。
舞田さんは、無解答率を「思考停止率」であると書いていますが、あえてそれを積極的に評価してみるとして、例えば、「正しい」かどうかはっきりしないと書きたくない(つまり「間違っている」ことは書きたくない)と考えに考えた挙句何も書けなくなる子どもが都会には多いなんてことはないですかね。
メディア論なんかで、「『間違った』ことは書くべきではない」なんて意見をいう単細胞な人っていますよね。じゃあ、お前が「正しい」と思っているものを正しいと保証するものは何なんだと突っ込みたくもなりますが、ある程度まともにものを考えられる人なら、自分が言っていることには間違いもあるかもしれないくらいの感覚ってありますよね。それで結局確定的なことが言いにくくなってしまう。
そういうわけで、無解答率は「思考停止率」なんかではなく、「考え過ぎ率」であるなんて仮説は、これこそ考え過ぎですかね。
また、田舎の人は自然に触れる機会が多い。自然に触れると色々と考えを巡らせられるようになる。よって、都市化があまり進んでいない県のほうが無解答率が低くなるというのはどうでしょう?
色々と、皆さんにも考えてみてほしいと思いました。「正解」なんてものが簡単に出せないことについて、自分なりに根拠を持って意見をいう。そういうことが大切だと思うからです。
私も、塾長に賛同してそんな仮説を色々と考えてみたいと思われた方は、下のボタンをぽちっとおねがいします。
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