2018年11月25日 23:28

子どもたちには今当たり前のように取り組んでいることを大切にしてほしい

 今日は、音楽大学オーケストラ・フェスティバル2018ということで、東京・池袋の東京芸術劇場に家内のあきこさんと小5の娘と一緒に行ってきた。長男の鉄郎君は、明日から定期テストのためお留守番。

 東京芸術劇場は、個人的にとても思い出深いホール。

 私が大学2年の時にここが完成したのだが、そのこけら落としに東京都豊島区にある私の大学と立教大学のオーケストラが招待されて、ここの舞台で演奏させてもらったことがある。

 西千葉に塾を開いて今年で17年目になるが、すっかり東京に行くことも稀になってしまった。久しぶりの池袋だったが、芸劇は完成から30年近く経ってもとてもきれいだった。

 千葉市内でも随一のホールと言われていた旧京葉銀行文化プラザ音楽ホールは、東京芸術劇場よりも10年も新しいのに、「老朽化」により現在閉鎖されてしまっている。千葉は、政令指定都市だとか言われているけれども、こんなところからも文化の程度の差を感じ、寂しくなってしまう。

 コンサートの演目

 ・レスピーギ作曲/交響詩「ローマの噴水」

 ・プロコフィエフ作曲/組曲「3つのオレンジへの恋」(以上上野学園大学が演奏)

 ・ホルスト作曲/組曲「惑星」(桐朋学園大学が演奏)

 近代の人気のある作曲家の有名な作品によるプログラムだが、どれも演奏される機会があまりないような印象がある。特に「3つのオレンジへの恋」は、プロコフィエフの若いころの傑作なんだけれども、私自身、ライヴで聞くのは初めてだった。「よくぞやってくれた、上野学園大学!」と言いたい気分だ。

 桐朋学園オーケストラの「惑星」は圧巻。もういっぱしの音楽家として活動している人もいるのだろうか。名手ぞろいのようで、まず楽器の鳴りからして全然違う。彼らの演奏を、事前に何も知らされずにプロオケのものだと言われたら、私程度の耳ならそう信じてしまうだろうと思う。

 ホルスト作曲の「惑星」は、そのメロディーの一部を使って平原綾香がヘンな歌を歌っていることで有名であるとしたら大変残念なのだが、元の曲のほうは、ヴァリエーションに富む豊かな楽想が目くるめくばかりに現れる音楽絵巻ともいうべき名曲。圧倒的な迫力の「火星」に始まり、最後は神秘的な静けさのうちに女声合唱のスキャットが次第に消えていくように終わる。終わった後はなんだか、外惑星の観測任務を終了し、今もただ一人太陽系の果てを旅し続けるボイジャー号になった気分になる。

 あまりオーケストラの演奏を聞きなれていない小5の娘も、1時間ほどの演奏時間の間、興味が途切れず楽しめたようだ。オーケストラを聞く楽しみを覚えてくれると嬉しい。

 こうやって音楽大学を出た人たちは、将来はソリストやオーケストラの団員として活躍するのだろうと思われるかもしれないが、その「就職」事情はなかなか厳しいと聞く。なにぶん日本には、アマチュアも含めて楽器がびっくりするほど上手な人というのは、結構たくさんいるものだったりする。その中で音楽家として活躍し続けることは、並大抵のことではないようだ。

 今回のコンサートのように、何らかの理由で演奏機会の少ない演目を演奏できるのは、やはり彼らが音大という恵まれた環境にいるからできるのだろう。プロの音楽家だったら、客の入りや依頼主の意向を考えなければいけないから、そうそう自分のやりたいものばかり演奏できないだろう。もっと基本的なところから言うと、オーケストラの曲を演奏するためには、それだけの楽器を演奏できるメンバーが必要だし、今日の演目ならパイプオルガンやらアルトフルート、バスオーボエのような特別な楽器や、女声合唱も必要だ。どれも、現在音大という恵まれた環境にいるからできることだ。

 今回の演奏会のようなものは、彼らの人生にとっても本当に貴重な機会で、一生にまたとない経験になるのだろうと想像する。

 翻って自分自身のことを考えても、吹奏楽部やオーケストラに入っているときは、楽器を仲間と一緒に演奏するなんてことは当たり前のことのように思われていたが、今社会人として働いていると、そうそうそんなことはできないことだ。今、私の中に残っているのは、大学3年の時にとてもフルートが上達したという記憶だけだ。とても力のある美しい音色が出て、自在に吹けるようなところまでかなり近づいていたと思う。

 それで今、何か儲かるとかそういうことは何もないのだけれども、人類の文化の中で最も素晴らしいものにそこそこかかわった経験があるから、自分は人間としてちゃんと「根っこ」のようなものを持っているぞという自信がある。それはかけがえのないものだと思っている。

 だから、道場の子どもたちについても、今何か取り組んでいる活動などがあったら、大切に取り組んでほしいなと思う。この頃はこんなことをやっていて、大変なこともあったし失敗もしたけれども、よく頑張ったし結構上手になったなあなどと思えるようなものにしてほしい。音大生たちの演奏を聞いて、そんなことに思い至った。

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