2020年02月04日 12:11

子どもの言葉の力をはぐくむのは、家族の共通体験

 2か月ほど前の記事で、「てなもんや三度笠」という昔のテレビ番組の一部をYouTubeで見ていたら、ちょっと難しい語彙がたくさん出てきたということを書きました。「てなもんや三度笠」とは、最高視聴率64.8%というバケモノテレビ番組です。それから1か月ほどして、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」でおなじみの新井紀子さんが東洋経済のネットマガジンに上げていた記事が、私のブログと同じようなことに触れていました。

 多分、私や現在の親御さん世代よりも上の年齢の人で、「印籠」という言葉や物を知らない人はいませんね。それは間違いなくこの影響でしょう。

というか、今武田鉄矢さんが水戸黄門をやっているんですね。私の世代だと西村晃さんですかね。のちに、もと助さん役だった里見浩太朗さんが黄門さんに「昇格」していてびっくりしました。

 それはともかく、こちらも平均視聴率20%越えの超長寿番組で、我々の世代で、好き嫌いはともかく、上のような映像を一度も目にしたことがないという人はまずいないですよね。こうやって、テレビ全盛時代は、各家庭で同じようなものを見て、大人が使うような言葉に子どもたちも日常的にさらされるような環境が存在したわけです。子どものころに「『印籠』って何?」と、親に聞いたことがある人も少なくないでしょう。このような環境の中で、子どもの頭の中にたくさんの語彙の種がふりまかれ、親とのコミュニケーションの中で言葉の土壌が耕され、生きた語彙力が培われてきていたのでしょう。

 私の親なんかを見ていても、それほど高度な教育は受けていないはずですが、コミュニケーションコストを意識させるような言語能力の不足はあまり感じません。むしろ、国定忠治の話であるとか、森の石松がどうとか、「ととさまの名は十郎兵衛・・・」とか、今だと歴史のネタ本を読まないと分からないような浄瑠璃の話もよく知っています。わざわざ振りをつけて言ってくれることもあります。

 どうしてそんな話をよく知っているのかというと、昔は田舎の学校に旅芸人たちがやってきてはしばらく逗留し、村の人たちを集めて芝居をやったんだそうです。それを子どもだけでなく集落の大人たちもみな集まって見ていたんですね。おそらく当時は、「あそこであの女の子はお父さんに何を言っていたの?」--「それはね、・・・。」といった芝居帰りの親子の会話があちこちで聞かれたのでしょう。

 確かに、現代のほうが情報はたくさん、それこそ一生処理しきれないくらいあふれてはいます。しかし、その享受方法は、スマホのような機器を用いた、孤立化したものになっているように思います。こういった流れを個人の力で変えようなんてことは難しいでしょうけれども、子どもたちの豊かな言葉の力をはぐくむという観点からは、何かしらの工夫が必要だろうなと思います。家族で一緒に毎週見るテレビ番組を決めておくとか、一緒に映画を見に行くとか、舞台芸術を鑑賞するとかして、その感想を語り合ったり、思いっきりはまってみるということを、親子で経験するのがよいのではないでしょうか。

 まぁ、国語道場のホームページをご覧になっているような親御さんでしたら、すでに実践されている方が多いとは思いますが(^^)

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