子どもを伸ばせる親になる
新年あけましておめでとうございます。本年も国語道場をよろしくお願いいたします。
新年ということで、少し大きなテーマのお話をしようかと思います。
国語道場は、お蔭さまで、前身の塾の時代を含めて今年で西千葉の地に開業して20年目に入りました。私自身、学生時代のアルバイトから数えると、25年以上も塾の仕事を続けていることになります。
日々たくさんのお子さんやその保護者の方々と接しているものですから、私は当然膨大な経験を積んでいることになります。逆に保護者の皆さんは、子どもというものを知る機会がほとんどの場合ご自分のお子さんのみということになります。失礼ながら、当然経験値が浅いということになります。そのためか、私のような仕事をしている人間から見て絶対NGのようなことをやってしまっている方も散見されるわけです。そのようなわけで、お子さんに接する上での最も基本的な考え方というか心構えのようなものを簡単にまとめておこうかと思います。
まず、あまりよろしくないタイプ、つまりお子さんを伸ばせない方はどういう人かというのを端的に書いておきます。それは、子どものできないところを気にする人です。最悪なのは、それが止められずにお子さんをいじりまくってしまう人ですね。
世の中には、今は亡き鳩山邦夫元法務大臣のように、まったく勉強しなくても東大に入れたと言う人がいます。そういう人はどうでも良いとして、ほとんどの場合親は、様々なレベルで自分の子どもが今一つ勉強ができないという現実に直面する時期があるはずです。そういう時期をいかに乗り切るかで親としての力量が試されているといってもいいでしょう。
こういう状況でありがちな失敗は、子どもに「わかりやすく、上手に」教えてやれば、出来るようになるのではないかと思ってしまうことから生まれます。このような思い込みから、個別指導チェーン塾に通わせるとか、高学歴な親御さんだと自分で教えようとするなどされるわけですが、往々にしてこれらはうまくいきません。なぜか。
勉強ではない例を考えてみましょう。大谷翔平という日本出身の優れた野球選手がいます。米国メジャーリーグに進んでからも優れた成績を残し続けています。なんでも彼の打球速度は、力自慢がひしめくメジャーリーグの中でもトップクラスのものなのだそうです。
大谷選手がなぜそんなに強くて速い打球を飛ばすことができるのか。米国まで出かけてみてもよいですが、そこまでやらなくてもNHKのBSに加入すれば、年間に何度も彼の打撃を目にすることが可能でしょう。もっと専門的にスポーツ科学的にどのようなメカニズムで彼がボールを打ち返しているかを研究することも、人によってはできるかもしれません。
しかし、いくら大谷選手のバッティングをつぶさに観察したところで、彼のような打球を飛ばすことができるようにはなりません。大谷選手を研究するスポーツ科学者が、それを自ら実践してプロ野球選手になることも難しいでしょう。そんなことは当たり前のことだと皆さんも思われますね。
大谷選手のバッティングをどれほどよく観察したり、詳細に分析してそのメカニズムを明らかにしたところで、大谷選手のようなバッターになることは極めて困難です。なぜなら、普通の人は大谷選手のような身体能力と野球勘を備えていないからです。大谷選手のようなスラッガーになるためには、彼の打撃についてよく知ること以前に、彼と同等かそれ以上の基礎体力を築き上げるためにトレーニングを長年する必要があり、さらにレベルの高い試合をいくつも経験しなければならないでしょう。
こんなことは考えるまでもなく当たり前のことですね。しかしながら、ひとたび話が子どもの勉強ということになると、なぜかこんなことも分からない人がたくさん出てきてしまいます。考え方や解き方についてどんなに「上手に」「わかりやすく」教えたところで、子どもにそれを理解して記憶し、再現できる程度の学力の基礎が備わっていなければ、出来るようになどなるわけがありません。自分の学力に自信のある親が、子どもの勉強にかかわるうちに虐待に走る例がたまに報道されますが、そういう親は自分がこれだけ「わかりやすく」「上手に」教えてやっているのに、子どもができるようにならないことに我慢がならないのでしょう。しかしながら、学力の基礎のできていない子どもにいかに「上手に」教えたところでできるようにならないのは本来何の不思議もないことです。そもそも子どもにそうした学びの基礎力が備わっていない責任はどちらかというと親側にあるのであって、そこで腹を立てるなどということは、客観的に見て恥ずかしい、いわば天に唾するような行為ではないかと私は思います。
勉強でも音楽でもスポーツでもよいのですが、お子さんを伸ばすことのできる親とは、子どもの可能性を信じつつ、「今のすがた」を無条件で受け入れられる人です。
勉強でつまづいているとします。まずそれは、学力の「基礎体力」において不足があることが考えられます。したがって、短期的に何でもできるようになることはあり得ません。そのようなときに親はどのように対応すべきか。
ここまでくれば言うまでもないことですが、子どもを劇的に変えようなどとする試みは放棄すべきです。子どもがベストを尽くして、今ある力でできるところができていればそれでよいと親が開き直ることです。それと同時に国語などの基礎学力に直結する力を継続的に伸ばすトレーニングを施します。このようにして基礎学力が少しずつ伸びるような努力をし、そのうえで様々な学科の勉強を繰り返していくことです。これこそが、ゆっくりではありますがはるかに確実に子どもを伸ばすことができる道です。
こうしたたゆまぬ努力を子どもが続けていけるように、時にがんばれと励ましたり、またある時には大丈夫だと声をかけたりすることができる人でありたいものです。
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