崩れたら崩れたでがんばるモン
国語道場は8月4日より10日まで、お休みをいただいております。お休みの間、私は家族と熊本旅行に行っておりました。
熊本は私の母の出身地でして、もともと約10年ぶりに「ゴールデンウィーク」中に訪問する腹づもりでした。ところが、ありがたいことに、3月・4月とご新規の方々のお問い合わせ、ご入塾が殺到しまして、旅行の計画が立てられず、8月に延期していたのでした。
それが、皆様ご存じの通り、4月14日と16日に最大震度7を記録する震災が発生しました。地震発生から100日以上が経った今も、多くの人が避難生活を送るなど、不自由な生活を強いられています。
写真は熊本空港の2階部分で、本来ならこちら側からお土産物売り場や保安検査場に入れるはずの場所。パーティションが並べられ、立ち入り禁止になっていた。どうも建物の中央付近の損傷が大きいらしく、どの階でも通行できなくなっていた。
一時は8月の訪問も中止しようかと思ったのですが、こんな時こそ私の熊本愛を示すべきであろうということで、あえて出かけることにしました。
熊本と言えば、まず真っ先に向かうのは熊本城です。状況は想像以上に深刻なものに思われました。
二の丸方面から天守を望む。石垣が崩壊し、長い塀が倒壊している。
8月上旬現在、「熊本城」として整備されてきた領域は、ほぼ全面立ち入り禁止になっています。
外側から見る限り、いたるところで石垣の崩壊、建物の倒壊が起きているようです。
旧二の丸の一部が「桜の馬場城彩苑」という資料館・お土産物店コーナーになっていて、そこの「湧々(わくわく)座」という資料館・小劇場で現状の熊本城に関する情報を聞きました。石垣について学ぶことができて、大変興味深かったです。
最も興味を惹かれたのは、石垣の崩壊が地震の揺れによって起きたのではなかったという話でした。
え?じゃあこのあちこちで起きている石垣の崩壊は何によって起きたの?と言うと、それは地震後に起きた大雨によって直接的には引き起こされたということです。
石垣を形作る大きな石と石の間やその奥には、栗石(くりいし)というこぶし大の石がたくさん詰め込まれているそうです。この栗石によって大きな石と石との間に隙間ができ、そこから石垣の中にたまった水が排出されるようになっているそうです。
4月の大地震で栗石が本来の場所から移動して、石垣の底の方にたまってしまったと考えられています。水槽に粒の大きさの違う砂や石を混ぜて入れ、水槽ごと揺すると、粒の大きな石が底に、小さな砂が上の方に集まります。それと同じことが起こったのでしょう。
その結果、石垣がプールのような状態になってしまいました。大雨が降ると、水は石と石の間から外に排出されず、どんどん溜まっていきます。そして水圧に耐えられなくなった石垣から次々と崩壊していきます。実際に熊本城の石垣は、大雨ののちに内側から爆発するように崩壊していったそうです。
また、湧々座での説明でさらに興味深く思われたのは、石垣が作られた時代やその工法によって、崩壊しやすかったところとあまり崩壊していないところとが現れたという話でした。
年代 | 平面 | 角 |
加藤清正築城時(より古い) | 乱れ積み | 重ね積み |
細川氏増改築時(より新しい) | 布積み | 算木積み |
加藤時代の工法を、担当した石工たちの名称から、「穴太(あのう)積み」とも呼ぶようです。大きな石をあまり成型しないで積み上げています。
確かに、加藤清正築城当時のまま残る宇土櫓(うとやぐら)は健在!石と石との間の隙間が多そうですね。
一方、加藤氏が改易された後に熊本に入った細川氏に増築されたものや、近代以降に改築・修復されたものには、平らな部分は成型された石がパッチワークのように並ぶ布積み、角はジェンガのように長い面と短い面を交互に積み上げる算木積みで作られた石垣が多いそうです。
石垣が崩壊してしまった戌亥(いぬい)櫓。確かに、より新しい年代の石垣の積み方の特徴が見て取れます。石と石との間が少なく、水がたまりやすい構造になっていたのでしょうか。
これだけ城が甚大な被害を受けているのに、石垣の工法とその被害状況との関係に「興味深い」などと言うのはいかにも不謹慎に思われるかもしれませんが、これは、例の「湧々座」の人の説明のトーンが実際こんな感じだったからなのです。本当に、熊本城に携わる人々からあまり悲観的なものを感じませんでした。
「湧々座」の人のこんな言葉がたいへん印象的でした。
今回の地震で石垣が崩れたり、天守の瓦やしゃちほこが落ちたりしましたが、それによって普段見ることのできない様々な発見がありました。現在も城内は被害状況の調査が手つかずの部分がたくさん残っています。ということは、その調査が進んでいくことで、さらに新しい発見があることが期待されます。
所与の境遇に対しいたずらに悲観的にならずにそれを受け入れ、前向きに物事に取り組んでいるところが大変素晴らしいですね。実にたくましい、あっぱれな心意気と思いました。
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