「志あるところに道は開ける」ことを生徒から学ぶ
授業開始の20分前くらい。突然スーツ姿の男性が教室に入ってきた。
ああ、またコピー機か何かの飛び込み営業かなと思ったら、スーツ姿の塾の卒業生だった。
念願叶えて、都内の超有名ミュージカル劇団の社員になっていた。
高校3年の夏の前だったか、彼は突然塾に電話をかけてきて、辞めてしまった。
こちらの彼の指導方針は、高校の評定を高い水準で維持して、指定校推薦などで大学進学を、というものだった。で、それは実際うまくいっていた。
また、彼自身、生徒会長を務めるなど、学校の活動も積極的に参加していた。推薦で大学を目指すなら、まったくもって申し分なかった。
それが、ある時、どうしても将来ミュージカル劇団で働きたいから、推薦で大学には行かないと言い出した。当然私は猛反対。
反対したのには、こちらの目算が狂うということも正直あったけれども、何より彼の人生を心配してということが大きかった。
当時、ミュージカル劇団といえば、今風に言うとブラック企業そのものだと言われていた。給料そのものも安ければ、こなしきれない仕事をどれだけ残業してやったとしてもその分の手当はなし、交通費もなしなんてのは当たり前という噂をよく聞いた。また、実際そうであったらしい。
彼は大変な舞台芸術の愛好家。もうマニアと言っていい。中学生の時分から、好きなミュージカルやショーについて熱く語る少年だった。
こっちは、いつも彼の話を聞いて感心しきりだった。これほど自分に大好きでのめり込めることがあるというのはすばらしいことだ。
それだからこそ、ブラック企業のようなところに勤めてしまうと、結局ミュージカルなんかを楽しめない生活を送ることになってしまうんじゃないかとも思った。
そんなわけで、こっちも彼の進路希望については反対してしまったんだけれども、上に書いたように塾も辞めてしまったので、もやもやしたものが残っていたし、心配もしていた。
それが、まあ今日こんな感じで突然来てくれて、一丁前に営業のあいさつとをして公演の案内を置いて行ってくれた。彼のことを知っている古参の講師も大層喜んでいた。
今日聞いた話だと、劇団を創設した天才的な演出家が退任して(ご存じの方も多いと思うが)、劇団は結果的に正常な会社になってきているんだそうな。交通費もちゃんと支給されているということで、安心した。
なんといってもうれしかったのは、彼がいかにも彼らしいまんまだったこと。大変なこともたくさんあるだろうけれども、充実している感じだった。
それと、私は最初反対してしまったけれども、それをものともせずに自分の希望を貫き通したことには、ちょっと尊敬の念すら感じた。
あの塾長は反対していやがるけれども、いつかきっと見返してやろうなんて気持ちになってくれていたならば、それはそれで彼の人生にとって少しは役に立てたのかなと思うことにした。
ということで、パンフレットやプログラムなどたくさんもらったので、欲しい方は塾長まで声をかけてください。
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