2019年04月07日 20:45

悪いことは言わないんで、勉強は若いうちにやるのが一番ですね

勉強は、しなきゃいけないものじゃありません。したいと思うものです(阿久津真矢)

 私、最近ポーランド語の勉強を始めました。そう生徒たちに言うと、

「それ、なんか役に立つんですか?」

なんてことを結構な確率で言われます。う~ん、なんというか、分かってないんだよなあ。

 私が英語以外の外国語を勉強するのは、これで4つ目です。

 最初に手を出したのがドイツ語。高校2年生の時でした。NHKのラジオ講座を全編やり抜きました。がんばった。

 高2でドイツ語をやってみようと思ったのは、クラシック音楽が好きで、クラシックといえば何といってもドイツ音楽が中心で、そういう意味でドイツの文化に何となくなじみがあったからという背景はありますが、どうして学校では英語をやらなければいけないのだという、いま考えると謎の反抗心が強くありました。

 その後大学の第2外国語でフランス語をやり、これは修士課程までの6年間続けました。

 一番上達したのはロシア語です。今でも外国人と何か話さなければいけないという状況だと、ロシア語が一番上位に出てきてしまい、英語がなかなか出てこなくて困っています。

 で、今はポーランド語。やろうと思った背景は、ショパンが好きになったこと。私のようにオーケストラを中心にクラシック音楽を聴いてきた人にとって、ショパンは、名前は知っているけれども、作品は「子犬のワルツ」とか「革命のエチュード」とか「別れの曲」とかしか知らなかったりします。何せピアノ作品ばかり書き続けたと言っていい人なので。

 不思議なことに、ショパンという作曲家、ひとたび好きになると、ショパンにもっと近づきたい、ショパンのために何かしたい(?)という抑えがたい衝動に駆られるようになるんですね。私の場合はこれからピアノを1からというわけにもいかないので、ならばポーランド語だという、まあ、はたから見るとなんだかよく分からないことになったというわけ。

 とにもかくにも、何かを学ぶというのは、そのきっかけに止むに止まれぬ気持があるものなんですよね。

 「それ、なんか意味あるんですか?」なんて問題じゃないんですよ。こういう自分の内側から湧き上がってくるような感情に、子どもたちも耳を傾けてほしいなあと思います。

 しかし、なかなか覚えられないですね(^^;

 勉強、するならやっぱり若いうちです。みんな、自分が何を学びたいのかよく心の声を聴いて、子どものうちからどんどん打ち込んでいってもらいたいですね。

 「ポーランド」に引きずられて、今日は神奈川県葉山町にある神奈川県立近代美術館の「ポーランド・ポスター展」に行ってきました。あきこさんと娘が北海道旅行に行っているので、ひとり小旅行です。

 学芸員さんが私の学生時代、ロシア語を勉強されていた先輩だったので、びっくりしてしまいました。

 展示されているのは、ポーランド人民共和国、つまり共産主義の時代のポスターです。ポーランドのポスターを初めて見たんですが、グラフィック中心で、しかも表現方法が自由だったことに驚きました。

 何を驚くのかというと、同じ共産主義時代のロシアというかソ連のポスターとあまりに違うこと。例えばコンサートや展覧会のポスターは文字ばっかりなんですよ。誰それ指揮、どこそこ交響楽団の演奏会で、曲目は何某の交響曲第何番何調作品番号いくつ、何年何月何日にどこそこで…といった文字情報ばっかり。

↑ちょうどこんな感じ

 ロシア文字なんでこれだけでも視覚的にインパクトがあるというか、かっこいいっちゃかっこいいんですがね。

↓ポーランド人民共和国だとこんな感じ。

 ムソルグスキイのオペラ「ボリス・ゴドゥノフ」の公演のポスターなんですが、いつどこで上演されるとか、だれが出演するとか、チケットがいくらとか、問い合わせ先はどこかとか一切なし。これでポスターの用をなしているのか、こっちが心配になってしまいますが、これでよかったらしいです。

 驚いたもう一点。自由な表現。ポーランドのものには本当にいろいろな絵画表現がポスターのグラフィックデザインに取り入れられています。

 これはソ連だったらアウトだったんじゃないか、悪くすれば収容所送りか銃殺なんてのもあり得たんじゃないかとさえ思います。ソ連では、芸術表現に「社会主義リアリズム」という決まりがあって、造形だったら写実的じゃなきゃダメ、明るく元気な感じじゃなきゃダメとされていました。北朝鮮のポスターなんかもこんな感じですよね。だからほかの共産圏のデザインも、そのようなものなのかと思い込んでおりました。いや、自分の目で確かめないととあらためて思いました。

 学芸員さんの説明によると、ポーランドの場合は、共産主義→非商業主義ということで、チケットの売れ行きとか言ったことよりも製作者の自由な表現が可能だったとのこと。ソ連の場合は共産主義だから自由な表現が厳しき制限されていました。同じ理由でも、結果がこれほど大きく違うのは興味深いですね。

 仮説ですが、ソ連はロシア帝国を継承した多民族国家で、ポーランドはポーランド人の国家であったという違いが背景にあるのかもしれません。他民族のソ連の場合、個人の自由な表現をどんどん認めていくと、やがて国がバラバラになってしまうという心配が権力者側にあったのではないでしょうか。ポーランドであれば、どれほどデザイナーたちに自由な表現を許したところで、ポーランドというアイデンティティが崩壊することにはつながりません。

 うん、またポーランド語を勉強するモチベーションが上がってきたぞ(^^)

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