成長する共感力
読書指導「ことばの学校」で使われる本が、従来の200冊から一挙に260冊に増えました。追加発注した本が続々と届いています。
国語道場では、現在のグレードはこれまでの本をすべてお読みになったところで自動的に昇級できるものといたします。新しく昇級したグレードから、追加された図書をお読みいただくことにいたします。もちろん、新たに追加された本も読んでから昇級したいというお子様につきましては、ご要望の通りにさせていただきます。
しかし、いいですね、追加の本も。
従来のラインナップももちろん大変素晴らしいです。印象としては、いかにも良書といった感じです。それに対し、新規に投入される本には、現代的な問題に切り込んだドキュメンタリーなどが含まれ、攻めの選択といった感があります。
ざっと見た中で、「心のおくりびと」という本を注目の本として1つ挙げたいと思います。 私恥ずかしながら、復元納棺師という職業を、先週届いたこの本で初めて知りました。
納棺師という職業は、映画「おくりびと」で広くその名称が知られるようになりましたが、復元納棺師は、事故や天災などで激しく損傷した遺体を、出来るだけ生前の姿に近い形に戻すという仕事をする人だそうです。
激しく損傷した遺体に対面してしまうと、その遺族がその人の死を受け入れられなくなってしまうことが少なくないそうです。そこで、遺体をできるだけ元の状態に直すということが大変重要になってくるということです。
「こころのおくりびと」では、東日本大震災で津波に呑み込まれて亡くなった女子高生の話が紹介されています。愛娘の突然の死という現実に茫然自失となる父親の描写からは、胸を引き裂かれるようなつらい思いが痛切に伝わってきます。
本の中で紹介されている女性の復元納棺師は、残された家族たちがこれから先の人生を悲しみを抱えながらも生きていけるように努めます。激しく傷んだ女の子の亡骸を生前の姿に復元するさまが順を追って克明に描かれています。
修復された女の子の遺体と遺族が対面する場面。慟哭しながらも現実を受け入れていく遺族たちの姿に、涕涙を禁じ得ませんでした。
塾長が号泣しながら本を読んでいるのを生徒たちが見るのもなんでしょうから、みんなが帰った後に一人で読みました。
さて、そこで、子どもたちがこの本を読んだらどう感じるのかなあと言うことをちょっと想像してみました。 子を持つ大人が読めば痛切に感じられるものも、子どもたちが読むと案外あっさりとした感情しかもたらさないかもしれないなあとも思いました。
でも、まあそれはそれでいいのです。大人が感動したものを子どもが感動してくれないからと言って「がっかり」する必要はありません。なぜなら、子どもたちの心の中にきっと何かは残るだろうし、彼らが成長してものの感じ方が変わったときに、きっと思い出したり、あらためて本を手に取ってくれるかもしれないだろうからです。
私が思い当たるのは「一つの花」というお話。私はこれを教科書で読んだ記憶があります。今でも教科書に採択されているものなのでご存じの方も多いことでしょう。
先の大戦末期。出征する父を見送りに駅にやってきた母と幼い娘。幼い娘はおなかをすかせ、「一つだけ」と言って食べ物をねだります。父はプラットホームのどこかからか1輪のコスモスを持ってきて娘に渡します。
私、駅のプラットホームという名称をこのお話で知った記憶がありますね。でも、当時感動したかというと、結構あっさりとした感じしかなかったような気がします。
改めて子を持つ親となってこの話を読むとどうか。ほとんどの方が胸が詰まるほど苦しいと感じられるのではないでしょうか。両親の気持ちに共感できるからです。
我々自身の経験を踏まえましても、子どもが何でも理解してくれないことは、本来それほど嘆くようなことではないということは言えそうです。
皆さんには私のいうことが分からないかもしれません。私は時々大変わかりにくいことを言うから、しかし、それでも皆さんはいつか私の言葉を思い出して、合点されることがありましょう。~Ф. М. ドストエフスキイ/『カラマーゾフの兄弟』
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