2019年08月23日 18:37

成長は突然現れる

 私は学生時代、大学でオーケストラに所属していた時に、担当楽器のフルートの個人レッスンを受けていました。

 それまでに高校の2年半、吹奏楽部でもフルートをやっていたのですが、このときはなにぶん我流で練習していたため悪いクセがついてしまっていたのでした。個人レッスンについてまる2年ほどは、その悪いクセの矯正に費やされたといってもよかったです。

 あご、のど、肩、胸の無駄な力を抜いて、楽器はしっかりと固定、音量を大きくするにしたがって上下の唇の間に空いた穴を大きくしつつ呼気のスピードを速めて・・・などなど、よい音色を出すために必要なポイントを頭に入れて、それを自己チェックしながらまず音出し、次いでメカニックの練習曲、教則本、オーケストラで演奏する曲と練習していくわけですが、なかなかつらい時間でした。吹奏楽でやっていた時は、何も考えずに吹きやすいようにやっていましたから、その自分の慣れたやり方についつい戻りたくなってしまいます。しかし、それではオーケストラで使い物になるようなフルート本来の美しい音色を出せるようにはなりません。

 レッスンの先生から当時言われた言葉を今でも覚えています。

変わる時は、突然ガラッと変わりますから。

 上に挙げたような注意点を守って、2年近く、ほとんど高校時代にやってきたのと同じくらいの年数が経ったときでしょうか、本当にドカンと楽器の音色が変わりました。フルート本来の暖かくて明るく、男性奏者らしい厚みのある豊かな音色でいろいろな楽曲を拭けるようになったときは、本当にうれしかったですね。オーケストラの先輩たちからも、「(メンバーの中で)今年一番伸びたんじゃないかな」などと言ってもらえて、楽器を続けてきてよかったと思いました。

 あらゆることに、守るべき手順、コツがあって、それを手抜きせずに繰り返し繰り返し練習してきた者だけが、抜きんでて上達できる。これは当然勉強にも当てはまります。

 数学の計算一つとってもそうです。式は省略せずに全部書く、イコールは横につなげないで改行して縦に式を続けていく、ノートは広くぜいたくに使う、補助的な筆算は大きく書く・・・。こうした当たり前のことも、子どもたちにきちんと身につけさせるのには結構大変だったりします。

 数学のノートなのに、答えしか書いていない。式を書きなさいと注意されても、書いたり書かなかったり、出来もしない暗算をしたり。問題と問題の間をきつきつに詰めて書く・・・。さんざん注意して、ようやく広くノートを使って、式も省略せずにやるようになって、正答率も上がったと喜んでいるのもつかの間、一週間後にノートを見ると、また元に戻っている・・・。

 でも、まあ、子どものすることなんてこんなもんです。賽の河原で石を積むような感じですが、それでも諦めずにまた叱ったりすかしたりして守るべきことを守るように指導を続けていくしかありません。

 なにぶん私自身、上にも述べたようにフルートの本来の美しい音を出したいという一心で、2年以上頑張った経験がありますからね。たかだか数か月で成績が上がらないだのなんだのと音を上げるような人間は、ただの根性なしだとしか思いません。

 さて、今は夏期講習終盤。毎日たくさんの子どもたちが、それこそ朝から晩まで勉強漬けで頑張っています。こうしてみていると、やっぱりいるんですよ。突然ドカンと成長する子が。

 なんだかテキトーな計算をヘロヘロやってばかりいて、「ちゃんと式を書け―」なんて何度も叱り飛ばされながら、かれこれ1年以上も行きつ戻りつしながら頑張ってきた子が、ここにきて突然強靭な計算力を身につけて、小テストでもほとんど満点が取れるようになりました。

 最近まで小学生の低学年くらいの日本語語彙力しかなかったお子さん。2年以上、当時のその子の日本語力に合わせた易しい問題集を使って、しっかりと文章に向き合わせ、自分のボキャブラリーを最大限使って答えを書かせる練習を積んできたところ、今度の定期テスト対策の問題でも、本当に的確で簡潔な解答を記述できるようになりました。

 こういうことは、もちろん、何の努力もしていない人が突然できるようになるわけではありません。自分の潜在能力を信じ、時にはめげそうになったり、正しくないラクなやり方でごまかそうという誘惑に駆られたりしながらもそれにうち克って、守るべきことを守って努力を続けてきた人にだけ、こうした輝かしい突然の成長はもたらされるのです。

 国語道場の私は、こういう泥臭い、しかし確実な努力のしかたを経験で知っている者です。それを道場に来てくれている子どもたちに伝えるべく、日々努めています。

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