2019年12月20日 20:22

文学的文章を好む子どもが賢い理由を考えてみた

 先日の記事でも言及したPISA(国際学習到達度調査)についてですが、テストと同時にアンケートを実施しています。その中でほぼ定番となった質問が、読書の好き嫌い、そしてその頻度です。直近2018年の調査でも同じ質問がありました。

 その結果はというと、もうだいたい御推察の通り、本をたくさん読む子どもは学力が高いというものです。それだけでは特に驚きも何もありませんが、私が面白いと思うのは、ノンフィクション(論説文)をよく読むという子どもよりもフィクション(文学的文章)を読む子どものほうが、そうではない子どもよりも明らかに学力が高い傾向にあることです。

 このことについて私は8月の記事にも言及しています。こちらは2015年の調査に基づいてのものだったんですが、2018年の調査でも全く同じ傾向、つまり文学的文章を読む子どもはそうでない子どもよりも明らかに学力が高いという結果が出ています。もうこれは何度やってもこのような傾向が出るとみていいんじゃないでしょうかね。

 8月の記事では、どうして文学的文章を読む子どもは学力が高いのかについて仮説を立てています。文学的文章は、そこに書かれているストーリー、情景などについて想像しながら読むものです。したがって、結果的に文学的文章をたくさん読むことで、書かれていることに対して自分から積極的に頭を使いながら読む習慣がつくのではないか。要するに想像力が鍛えられているのではないかということです。

 そして、今回、この想像力に加えて、フィクションは人間の知能の別の能力にもかかわっているのではないかと思い至りました。それは記憶力です。

 唐突ですが、NHKの大河ドラマ『いだてん』が終わりました。「史上最低」の視聴率を記録してしまった一方で、ツイッターや雑誌・新聞のコラムなんかを見ると、非常に高く評価されている。そんな不思議なドラマでした。

 低視聴率の理由については戦国時代じゃなくて近現代だったからとか、主要登場人物がマイナーだったからとか、時代や場面が速いテンポであっちゃこっちゃ飛ぶからとかいろいろ言われておりますが、要はついていけない人が多かったということでしょう。この複雑なテンポ感の中で、後々に重要な意味を持つ話の伏線が巧妙に仕組まれていっていたわけですが、そもそもそれさえ認識できなかった人も多かったんでしょう。

 最近のレビューにこんなものがありました。その中でドラマ評論家なる人の一言。「1年かかって伏線を回収するなどドラマ偏差値が高すぎる」

 この記事自体は比較的ネガティブな評価のものなんですが、重要なポイントは突いていますね。結局、物語においては受け手側の記憶力がとても重要なんですよ。伏線を仕組んでおいても、それを覚えておいてもらえなかったら何にもならない。「いだてん」のように、10か月も先に回収される伏線なんてほとんどの人が覚えられないということだと思います。で、少数の、ばっちり覚えている人だけが楽しめたということが言えるのではないでしょうか。まあ、私は若いころからドストエフスキイなんかを愛読しておりますから、余裕で楽しめました。

 小説やドラマを楽しめる人は、物語に出てくるちょっとしたことを記憶にとどめておく能力が高いはずです。本やドラマの物語の最初のほうに出てきたことが後になって重要な意味を持っていたことが分かるというすっきりと気持ちのいい経験を繰り返しているので、書かれていることをなるべく記憶しておこうと意識になるのでしょう。

 そんなわけで、小説ですとか、演劇やテレビドラマ、映画も含めていいと思うのですが、広い意味での文学を愛する人は、記憶力が良い傾向があって、それが高い学力に結びつくというのはあると思います。

 そういえば、今日12月20日は、「スターウォーズ エピソード9 スカイウォーカーの夜明け」の封切り日ですね。

 私もスターウォーズは大好きなんですが、塾生の小学2年生とか3年生にも、ものすごく詳しいお子さんがいて、びっくりしますね。で、スターウォーズに詳しいお子さんは、賢いなという感じがしています。親御さんの薫陶の賜物と思います。

 子どもたちにはよい物語をたくさん与えていきたいですね。

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