文章の「捏造」は作文技術向上の基本
いよいよ今週末から夏休みに入るということで、多くの中学校で第2回定期テスト・前期期末テストの範囲が発表されています。国語道場では普段の授業は学校の予習ペースで進んでいるため、すでに数学・英語・社会・理科の教科のいずれかで試験範囲の学習はとっくの昔に終わっていて、ずっと先のところを勉強している者も少なくありませんが。
国語だけは例外です。中学生には、普段の授業では生徒一人一人の国語力に合った教材を使わせ、個別進度式に教えていますが、定期テストが近くなると、教科書準拠ワークを使っての試験範囲の指導になります。普段の授業で身につけた国語力を、定期テストで発揮させるためです。
緑町中1年生の今回の試験範囲に、「わかりやすく説明しよう」という単元があります。読む・書く・聞く・話すの4技能というと英語を想像される方が多いかと思いますが、実は国語の授業でもこの4技能を教育することが学習指導要領で定められています。この単元は、4技能のうちの書く・話すに該当するものだと思われます。
今日の授業では、何人かの緑町中1年生が、この単元の課題として「おすすめの本を紹介する」という作文に挑戦しました。
この「おすすめの本を紹介する」のようなお題だと、なかなか書けないというお子さんが出てきます。理由は「おすすめの本」が思い浮かばない、というものです。まじめなお子さんに多いですかね。
こういう時多くの塾では、「そんなもの何でもいいから適当にでっち上げろ」と指導するところが多いのではないでしょうか。
国語道場ではどうかというと、同じですね(^^; 何か「捏造しなさい」と指導します。
「捏造」しろなどというと少々人聞きが悪いように思われるかもしれませんが、内容を「捏造」して文章をひねり出すというのは、文章作成の練習上、効果的なことなんですよ。
私は、現在のロシア連邦のモスクワ大学の予備学部に1年留学していたことがありまして、そこでの言語指導法が今の国語道場での指導にも役立っています。ロシアの高等教育機関における国語(つまりロシア語)の文章作成指導では、アカデミックな文章によく出で来る定型的な文章を書く練習をさかんにやらせていました。
文章というものは、ある程度決まった言い方の文の集合体であるという考え方が、かの地にはあるように思われました。したがってそのような文章を書けるようにするためには、定型文の練習を積ませるのが有効であると考えているのではないでしょうか。
日本では子どもたちにとにかく「自由に」作文をさせたがる傾向がありますね。それが大学生にもなってレポートの書き方もわからないなどという人間を作り出す原因であるように思われます。私が知っているのはロシアの例だけなので、欧米全体がこのような教育をしているかどうかは分かりませんが、文章作成指導法としては、日本よりもロシアのもののほうがよくできているように思います。
ロシアの定型文章作成の練習は、次のようなものでした。まず、文の公式のようなものが示されます。例として、
◯◯は△△において~な役割を果たした。
という定型があるとします。学生は、上の◯◯や△△、~に任意の言葉を当てはめて発表します。
「ピョートル1世はロシアの歴史において大きな役割を果たした。」
「量子力学は現代科学の発展において重要な役割を果たした。」
「マージャンは彼らの関係において中心的な役割を果たした。」
こんな感じで思い思いのものを学生が当てはめて発言したり、文を書いたりして練習します。上のように、論理的におかしくなければ内容は何でもよろしい。「量子力学」とか「マージャン」とか、自分がよく知らないことでもやっていないことでも何でもよいので、話の「捏造」です。しかし、こうすることで学生が主体的に文章を作成しようとする姿勢が育ち、なおかつ様々な語彙を使ってみることになりますから、言語能力の向上にも役に立ちます。こういったトレーニングを繰り返すうちに、アカデミックな文章を次第に読んだり書いたりできるようになっていきます。
このように、テーマに対してとにかく自分なりの作り話をひねり出すことは、よくないことどころか文章作成や言語能力向上に非常に有効です。したがって、国語道場では記述・作文練習として、文章内容の「捏造」を積極的に推し進めております。
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