漢字の覚え方
国語道場では中学生の国語の授業で毎回漢字テストを実施していますが、「漢字が苦手」というお子さんは一定の割合で存在します。
興味深いのは「漢字が苦手」というお子さんは、あらゆる学力層に分布していることです。
もちろん、学力の高いお子さんのほうがより多くの漢字を知っている傾向はありますが、漢字テストでなかなか合格がもらえない生徒は、成績上位層にもいます。ちなみに国語道場の漢字テストは、1つの範囲につき2回連続して全問正解しなければ合格できないというものです。
「漢字が苦手」というのは、ほとんどの場合たんなる怠けに過ぎません。練習をしていないから書けないだけだというのが現実でしょう。
しかし、それなりに練習はしているのだがなかなか覚えられないとなると、原因を考えて見る必要があります。
漢字に限らず、ものがなかなか覚えられない原因は、大きく2つあると言えます。
1つは日常的に思い出す習慣が乏しいことで、もう1つはそもそもの覚え方が良くないことです。
漢字についていうと、1つ目の「思い出そうとしていない」とは、普段から積極的に漢字を使おうとしておらず、面倒くさがってすぐにカナで書いてしまうようなことです。2つ目の「覚え方が良くない」とは、練習の仕方に問題があるということです。
1つ目についての対処法は、学校で習っていようがいまいが、知っている漢字はどんどん使い、知らない漢字でも辞書で調べるなどして書いてみることを勧めることです。
学校の先生によっては、習っていない漢字は本人の名前でも使うと叱られることがあるようで、難しいところがありますが、本当は積極的にどんどん漢字を使おうとする姿勢は奨励されてしかるべきものです。難関大学の国語の漢文の問題の本文では、旧字体が当たり前のように使われています。通常、高校で旧字体を教わることはありませんから、これは自分から進んで漢和辞典などを使って勉強しなければならなりません。このように、将来それなりの学歴を身に着けようと思う人は、自ら進んで漢字を学ぼうという姿勢がなければいけないわけです。したがって、子どもの時からどんどん漢字を使っていく態度は推奨されるのが当然なのです。
次に、漢字の覚え方、勉強法がよろしくない場合の対処法です。
漢字の勉強法というと、どのようなものを思い浮かべられるでしょうか。まあ、ほとんどの方が何回も書いて覚えるとお答えになるでしょう。
それはそれで、間違いありません。書いて覚えるというのは、英単語でも社会の用語でも、基本的な学習方法です。
問題は、その書き方にあります。
どういうことか。漢字を練習するときに、手本の字を1画見ては写し、また1画見ては移すようなことをしていたら要注意です。このやり方ではまず覚えられません。なにせ漢字の1画分にしか記憶力を使っていませんからね。漢字を書き終わったところで全て忘れていることでしょう。
文字のバランスが悪い、右に左にぶれているという時は、まずこのように1画1画手本を見てはノートに書き写すような書き方をしているはずです。自分の書いている文字を見ていないから、このように字が乱れるのです。
では、どのようにしたら良いのか。
ちょっとネットを調べていたら、このような記事を見つけました。曰く、「書かずに覚える」法。
これは、発達障害の一種で、視空間認知が苦手なお子さん向けの感じの覚え方として紹介されているものですが、これは大変素晴らしい方法だと思います。総じて、発達障害のお子さん向けのノウハウは、健常児向けのものとしても有益なものが多いですね。親の心の持ちようとか、子どもに対する言葉かけなどについてもですが。
具体的にどうするのかというと、一つの漢字は、多くの場合いくつかの部分から出来上がっていますね。その一つ一つの部分を口で説明できるようにして、それから暗記するというのが、この「書かずに覚える」法ということです。
どうでしょう。漢字の得意な方はどう思われますか?これってむしろ王道的な漢字の学習法だと思われませんでしょうか。
この「書かずに覚える」法の記事を読みまして、私自身、どのように漢字を勉強してきたかを思い出しました。
私は、「寝」という漢字がなぜかなかなか覚えられませんでした。そこでどうしたかといいますと、漢字の部分を語呂合わせのような形で覚えました。この字の場合は、「ウーン、ヨワ(ハ)又寝るぞ」という調子です。「ウ」は最初のうかんむりを表します。次の伸ばし棒(ー)は、うかんむりの次に書く縦棒を表します。「ン」は、3画目の縦棒の左隣の2つの点に形が似ていますね。「ヨワ又(余はまた)」は、うかんむりの下の右側の3つの部分を上から読んだものです。時代劇で殿様のような身分の高い人のような物言いみたいになっています。
このように漢字を部分に分けて言えるようにしたところ、苦手な「寝」の字も一発で書けるようになりました。
また高校時代、現代文の授業で毎週漢字テストがありました。ここで私は、1年間1回だけ1問不正解で、それ以外は全問正解という「偉業」を成し遂げたことがあります。高校の漢字ですから常用漢字で、そこそこ難しいのですが、どうやって勉強したのかといいますと、「1回だけ書く練習法」を取りました。
どのようにやるのかといいますと、一つ一つの漢字について、まずよく見てどういう部品からなるのかをよく観察し、それを見てまず覚えます。それから1回だけ紙に書く。このようにやりました。すると、面白いように漢字が覚えられるようになりました。
このやり方、よくよく考えてみると、上に紹介したブログの、「書かないで覚える」法とプロセスはだいたい同じですね。物の形をまとまりとして捉えるのが苦手なお子さん向けの練習法ということですが、特にそういった問題を抱えていないお子さんにとっても有効な練習法だと思います。ぜひご参考にしてみてください。
「書いて覚える」というのはたしかに基本ではありますが、しばしば無意味な作業に陥りがちの方法に陥りがちです。重要なのは、書くことで覚えているのではなくて、一度頭に入れた漢字をアウトプットするという流れを踏むことで記憶に定着しやすくなるということです。手本にある漢字を、単に左から右に移し替えるようにノートに写すような作業では、なかなか覚えられません。手本の字をまず記憶に焼き付ける。そしてその頭にある漢字をノートに書くというようになってくると、格段に覚えられるようになります。
—————
お問い合わせ先
国語道場(西千葉)稲毛区緑町1丁目27-14-202
千葉市
263-0023
043-247-7115
お電話のお問い合わせは、火~土曜日の午後3時~9時
メールは24時間承っております。