聞かれていることにこたえることの難しさ
国語道場では、今週13日から毎週日曜日、4週にわたって千葉県公立高校入試問題演習「過去問道場」を実施しています。
本番と同じ制限時間内に問題を解いてもらい、ただちに塾長が採点をして結果を返却します。そうすることで、例えば不正解となった問題についてはどのような点がいけなかったのか、受験生たちにつぶさに点検させています。
今回の練習で特に印象的だったのが平成27年度前期の理科の問題でした。
黄色いBTB溶液の入った試験管に水草を入れ、その全体をアルミ箔で覆う。一昼夜その状態で置いておいてからアルミ箔を取ると、BTB溶液は黄色のまんまである。それはなぜか、植物の働きに触れながら述べよという問題。
多かった回答は、
「水草は光合成ができなかったから」
とか、
「水草は呼吸だけを行っていたから」
とか、両者を組み合わせて、
「水草は光合成ができず、呼吸だけを行っていたから」
といったもの。もう、やったー、マルもらい~という感じでホイホイ書かれていました。
基本的にこれらは全部バツですね。まあ、高校によっては記述問題がほとんど白紙というところもあるので、そういうところではこれだけ書いてくれたらマルにしてあげようというところもあるかもしれませんが、私に言わせれば不正解もいいところです。
なぜか。それは、聞かれていることに答えていないからです。
もう一度問題を確認していただきたいのですが、聞かれていることは、なぜBTB溶液は黄色のままだったのかです。「植物の働きに触れて」とはありますが、質問の中心はあくまでBTB溶液の色の変化がなぜ起こらなかったのかということです。
そもそもなぜBTB溶液は黄色だったのでしょうか?
それはもう、皆さまもお分かりの通り、溶液が酸性だったからです。溶液が酸性なのは、この場合は二酸化炭素が多く溶けていたからです。
それでは、一昼夜経った後もBTB溶液が黄色だった理由は、それは二酸化炭素が減らなかったからですね。つまり、この問題の解答の中心は、二酸化炭素が減らなかったから、でなければならないわけです。上の回答例には、二酸化炭素の二の字も出てきていません。
したがって上の問題の正解例は、次のようなものになります。
「水草は光合成ができず、呼吸だけを行っていて、溶液中の二酸化炭素が減らなかったから。」
どうでしょう。「聞かれていることにこたえる」というのは簡単そうでいて、意外に難しいところがあると思われないでしょうか。
我々も自らを振り返ってみると、人から質問されていることにちゃんと答えていなくて、自分の知っていることやしゃべりたいことを言っているだけということが案外あるのかもしれません。しかし、こんなことでは、知的な場では相手にされなくなってしまいます。
明日からいよいよ県内私立高校入試がスタートしますね。
高校入試というと、今では公立高校の多くでも面接試験が行われます。
その対策として学校や塾で行われる「面接練習」というと、作法や予想答弁の指導が中心です。ドアのノックは2回とか、お辞儀の角度は45度とか、どうぞと言われてから椅子に座れといったことや、先方の学校のことは「貴校」と呼べとか、質問に対する答えはこういうことを言ったほうがいいとか、こういう言葉遣いはしないほうがいいとか、そういったものでしょう。
そうしたことが大切でないということはありません。むしろ常識に属することなので、十分に知っておいたほうがいいでしょう。
しかし、本当に大切なことは、面接官の質問について、いったい何を聞いていることなのか正確に把握し、それに対する自分の答えを簡潔に出していくということであるはずです。
大学の医学部ですとか就職の面接のように、それで落とされるということは、高校受験ではまずありません。その点は安心してもらっていいのですが、自分の将来のためにも、「面接官が聞いていることは何なのかな」ということに意識を集中して、適切な回答を出せるように努めてみると、よりよい経験になるのではないでしょうか。
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