2015年09月24日 11:39

英語の a の意味は《一つの》ではない

 私が大学浪人時代に通っていた代ゼミ津田沼校の英語講師だった鬼塚幹彦先生の授業は、今でもよく思い出します。哲学者や詩人の文章のように、短い言葉で的確に物事の本質を突く説明が好きでした。

 「(定冠詞の) the は共通認識、(不定冠詞の) a は非共通認識なんだね」

 「だから a の意味は《一つの》じゃないんだって。《いわゆる、一つの》だって(長嶋さんかい^^;)」

 先生のこうした説明を聞いて、本当に大切なことはすぐに理解できるようなものではなく、理解しようとする持続的な努力の中で少しずつ理解できるようになるのだということを、初めて認識しましたね。

 だいたい、教科書や参考書なんかにも、「the 《その》」とか、「a 《一つの》」とか、かなりいい加減な説明が今でも平気で載っていますよね。ちょっと奥深くて少ない紙面で説明できないとか、中学生には理解できないんじゃないかという配慮とか、あるいは書いているほうが全然分かっていないとかいった事情があるのかもしれませんが。

 こんないい加減な説明だから、中学生は a や the なんか大して重要じゃないと思っちゃう。英作文をさせても、平気で冠詞をすっ飛ばした文を書く。大学生くらいになっても、冠詞なんて「名詞の添え物」くらいの認識の者がいることがありますからね。

 a と the について、ちょっと検索をかけてみても大量の記事にぶつかります。やろうと思えば一大論文になってしまう問題でしょう。

 でも、そんなものを読んだり考えたところで、ほとんどの人に必要なアクティヴな英語力をつける学習にな結びつかないでしょう。かといって、冠詞は英語という言語の考え方の根本にかかわるものですから、出来るだけ正確に使い分けられるように生徒を指導する必要があります。

 そこで、指導者としては、英語と似た文法体系を持つほかのヨーロッパ語の学習経験があるといいと思います。

 a の意味が《一つの》ではないと言っているのはどういうことかということですけれども、それは、英語では a の複数形がどういうわけか使われていないという風に理解するのがいいと思います。

 「は? a の複数形」と思われるかもしれませんが、例えばフランス語で英語の a に相当する単語は un (男性形。女性形は une)ですけれども、それには複数形の des があります。

 「《一つの》の複数形?」いえいえ、そうではありません。話の中で初めて出てくるような一般的なもの、つまりお話をしている人たちの中で「非共通認識」の名詞で、単数のものにフランス語なら un とか une、英語なら a または an をつけるということです。もしその名詞が複数であれば、フランス語では des をつけますが、英語にはそれにあたる単語がないので、見た目上無冠詞になるということです。

 だから、英語の a の意味は、一見《一つの》のように見えますが、その本質的な意味は「非共通認識」、「一般性」であって、他のヨーロッパ語の不定冠詞と違ってそれに複数形がないものなのだという風に理解するのがよいと思いますね。

 これくらいのことは、英語を子どもたちに指導する者なら頭の中で整理ができていてしかるべきで、子どもたちが英文を書いたり読んだりするときに、理解できているか、正しく使い分けられているかということを丁寧に確認していく必要があると思います。なぜなら、こうした問題は子どもたちにとっては抽象度が高く、短時間で理解させることは困難なため、継続的な指導の中で、子どもたち自身に注意する意識を持たせることが不可欠だからです。

 また、こうした継続的な指導を通して、本当に大切なことはすぐに理解できるようになるとは限らない、持続的な努力の中でそれは可能になるのだというとを伝えることになっていくと思います。

 ところで、どうして国語道場のブログで英語の話をしているのかということですけれども、私、塾講師としては国語の指導をずっと続けてきているのですが、大学の専門はロシア語だったのです。

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