2016年05月15日 10:26

間違いだらけの職業教育①

 先日、「西千葉子ども起業塾」にかかわっている千葉大の学生さんが、国語道場に案内のポスターを持ってこられた。

 来月から大きなイベントがスタートするそうだが、あとまだ15名くらい参加できるということだった。

 私自身、この企画に参加したことはないのだけれども、なんとなく以前から興味があったので、ウェブサイトなどをちらちら見ることがあった。

 要は子ども向けのキャリア教育である。一般にキャリア教育というと、中学2年生が学校単位で受ける「職場体験」とか、キッザニアのようなテーマパークなんかがある。

 「職場体験」やキッザニアは、今ある職業の仕事の一部を体験してみましょうというものだ。それに対し、「西千葉子ども起業塾」はそうした一般的なキャリア教育とはちょっと違っていて、面白そうだなと思っている。

 「西千葉子ども起業塾」について私が面白そうだと感じる独自性は、①子どもたちがフィールドワークなどを通してニーズの把握や掘り起こしをし、事業を立ち上げることと、②利潤を目的とすることの二つだ。

 子どもたちのこうした活動のために、まずビジネスの基本的な考え方を教え、適宜アドバイスを与えるために、JFEスチールの現役のビジネスマンや、ゆりの木商店街の方々といった大人が参画するということのようだ。

 これは私がホームページなどから読み取った概要なので、違うかもしれないことをお断りしておく。実際のところは直接お問い合わせになっていただきたい。はなはだしく違う場合は迷惑であろうから訂正するので、ご指摘賜りたい。

 宋文洲という中国大陸出身の実業家のメールマガジンに面白いことが書いてあった。

 中国語や英語には「金儲け」と同じニュアンスの言葉はありません。“賺銭”は英語のMake Moneyと同じく、マイナス感情が付随していません。しかし、なぜか日本では儲けることは限りなくマイナスの意味を持つのです。

 確かにそうで、「お金を儲ける」という日本語の中には、なぜが背徳的なニュアンスが含まれている。

 県立千葉商業高校の3年生の授業で、バーチャルな事業を立ち上げて商取引をするという演習がある。私が同校の説明会に行ったとき、その授業の担当教師が面白いことを言っていた。

 「『モノを売るときには、必ず利益をつけるんだよ。そうしないと自分の給料も出ないぞ』と言うんですが、生徒たちはまず最初は原価で売るようなことをしますね。そんなことをしていればすぐに会社が立ち行かなくなりますから、そこで初めてなんで利益をつけなければいけないかを学ぶんですが」

 このように、利潤を追求することに対する日本人の背徳感は、言葉においてもにじみ出ているし、行動においても現れる。

 100円ショップで売られている商品の原価が20円とか30円だったと知るとする。それを聞いて、「うわ~、汚え~」と感じるとするならば、それこそが見当違いなのである。合法的と評価される範囲内で、安く仕入れて高く売るのは商売の基本である。

 キャリア教育が子どもたちにとって必要だと思わない大人はほとんどいないだろう。けれども、高校の文化祭の模擬店では「利益を上げてはいけない」とするところなどに、「金儲けのことは子どもには考えさせたくない」といった滑稽な大人の心理が見え隠れしてしまう。

 しかし、「子どもに金儲けのことは考えさせたくない」というのでは、キャリア教育の所期の目的は達せられないのではないか。本気で子どもにキャリア教育をと思うのであるならば、大人こそ変にカマトトぶるのをやめるべきだろう。

 利潤の追求はビジネスの基本だ。それを外していないところが、「西千葉子ども起業塾」を他のキャリア教育よりも私が面白そうだというところだ。

 特段「西千葉子ども起業塾」の参加者が増えることが国語道場の得になることは何もないのだが、同じことなら子どもたちにはより有意義な経験をしてもらいたいと思っている。

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