「分かりやすく」「とことん教えてもらう」から子どもの頭は悪くなる
一昨日の安河内哲也氏(東進ハイスクールの超人気英語講師の方)の勉強会があまりにも衝撃的すぎて、今日もそれに関した話を。
東進ハイスクールというと集団一斉指導の予備校なので、安河内氏のお話を聞きに行くと言っても、英語指導のあり方についてのみ関心を持って出かけていったのでしたが、実に意外なお話が聞けました。
従来のレクチャー(講義)式の一斉指導に関しては、全否定と言っていいのかなと思います。
「そもそも子どもたちは教師の説明なんか聞きたくないんです」
「(塾や予備校の教師は)教えるのが好きですよね。でも、そんなものは子どもたちにとっては迷惑でしかない」
と言い切られます。
さらに、一昔前に流行ったような塾や予備校の売り文句にあるような「熱意のこもった」「分かりやすい」授業なんかダメだと喝破しておられます。
「生徒が『分かりやすい』なんて気持ちよくなるような授業はダメ。生徒の頭がどんどん悪くなる」
「とことん教えてもらうことが、子どもたちにとっては逆にマイナスになるんです」等々
そのようなお考えから、現在では、氏は講義型の一斉授業ではなく、生徒が自発的に頭を使って参加するアクティヴラーニングの授業を実践され、教えこむことよりもその場の「司会者」、「盛り上げ役」役割に徹していらっしゃるとのことでした。
まさか東進ハイスクールのトップクラスの講師の方からこのようなお話が聞けるとは思ってもみませんでしたが、氏の指導理念と私の考えはほとんど一致すると言ってもいいです。
念の為に言っておきますが、レクチャーというものに全く存在意義がないとは私も考えていないし、おそらくそれは安河内氏も同様だと思います。1時間とか2時間とかの限られた時間に、講師が大量の情報を聴衆に聞かせる方法として、レクチャーは非常に効率的です。
ただし、対象が限られますね。大人であること、自分からその講演内容について集中的に学びたいという意欲を持っている者だけですね。だから、社会人のセミナーや大学の授業としてはもちろんOK。中学生や高校生なら、こう言ってはなんですが、本当にトップクラス、学力上位10%未満に対してのみ意味があるでしょう。
逆に、初等・中等教育課程のほぼすべての子どもたちにとっては、集団一斉授業は全く意味がないと言っていいですね。
大体、一斉授業の塾に行っていて、トップクラスじゃない子どもたちって、「授業は分かりやすいよ」とか言ってもどうせ授業の復習をやらないじゃないですか。分かった気になって満足しているだけで、その後でそれを自分の頭と体に染み込ませる練習をしないから、いつまでたっても成績なんか上がりっこないんですよ。
一斉授業で「分かりやすく」教えたって、生徒の頭は死んでいる。だから授業はアクティヴラーニングで、常に生徒の頭を働かせるようにする。全くそのとおりだと思いますね。
私の国語道場は、個別指導の塾なんですが、それは一人ひとり手取り足取り教えてあげるという形式では全くありません。そうではなくて、一人ひとりが時間内に頭と手を動かし続けるように個別指導する塾です。だから授業中は、生徒一人ひとりが、例えば重要事項を暗記するためにブツブツつぶやいていたり、単語の意味や漢字を辞書で調べていたり、解法のポイントやコツを私や講師に教えてもらったりと、常に動き回っています。
ひるがえって、安河内氏のお話から広げていくと、講師が横にべったりくっついて、手取り足取り教えこんでいるような「個別指導」塾、まあそこいらに星のクズほどあるようなチェーン「個別指導」塾に行っても、子どもの頭がちっとも良くならない理由も明らかでしょう。
講師が「分かりやすく」「とことん教える」なんてことをしていては、結局子どもは自分の頭をどんどん使わなくなるからです。子どもは、「分かった」とその時では思っても、話がわかりやすかっただけで、自分の頭を使って理解したわけではない。つまり頭を使っていないんですよね。だから頭が良くならない。
集団一斉授業なんて、産業革命期のイギリスで萌芽が生まれ、近代ヨーロッパ諸国に広まっていたものを、明治期の日本が100年前に導入した一方式に過ぎません。現在のヨーロッパ諸国でもいろいろな授業方式が試みられているというのに、なぜか日本はそんなものを後生大事に学校の形態として墨守しています。「個別指導」はそれに対して時代のあだ花として昭和後期にわっと広まったものでしょう。
ただいずれにしても、子どもたちに「分かりやすく」「とことん教える」ことが大切だという間違った認識に基づいて、どんどん子どもの頭を悪くしてしまうという点で同じようなものだと言っていいでしょう。
塾も学校も、子どもの頭をしっかりと時間内目いっぱい働かせられているかどうかが大切で、そうでないところはどんどん世の中から退場してもらったほうが良いのだろうと思います。
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